第3章 「空白の席は誰が為に」 第4話
朝日が差し込む中、寮の食堂には百合々咲の寮生たちがそれぞれ朝食を食べていた。
部屋着のままの生徒もいれば、
まだパジャマのままの生徒もいる。
柔らかな朝の光がテーブルを優しく照らし、
食器の音と小さな話し声が、
穏やかな朝の空気を織りなしていた。
結依と葵は静かに朝食をとっていた。
白米に味噌汁、そして焼き魚といったシンプルな和食。
箸の動きはいつも通り整然としていて、
彼女の表情からも普段通りの冷静さがうかがえた。
部屋ではまだ朱は寝ている。
朱自体早起きして早朝にランニングと木刀の素振りをして、シャワーを浴びて帰ってきたと思ったらベッドで二度寝の爆睡。
結依と葵にとってはいつものことだからあえて起こさなかった。
「おはよ」
結依と葵の正面に八重と哪吒が座ってきた。
「おはようございます」
葵が丁寧に返した。
「なぁ、結依 朝からする話じゃないんだけどさ」
「SNOW WHITEの練習のことですか?」
八重は静かに頷いた。
練習中は空気が悪くなるのを恐れて皆誰も何も言わないが、嫌な空気感は誰しも気づき始めていた。
「ロゼさんが舞台創造科と演出プランを練っているという話だ」
ロゼ・アディンも寝る間を惜しんで演出プランを練っているという話も聞く。
プロですら難しいというのだから、
学生がそう簡単に出来るはずもない。
「うちの子たちならそう簡単にボイコットしないだろうけど……問題は……」
「1年ですよね」
葵が静かに言った。
この春入学した1年生たち。
自分たちの実力や力量でここにやってきた。
入学してくるものは全員が自分が一番と信じて疑うことを知らない。
しかし、そのプライドを今、ズタズタに引き裂かれていた。
ここから這い上がれるかそのまま潰れるかは本人次第ではあるが、入学したての1年生にとってその試練はあまりにも早すぎる。
「光葉の話だと、今のところボイコットの話はないみたいだけど。 いつ出てもおかしくはないんじゃないかって」
すると、寮住みの生徒たちの話し声が聞こえてきた。
「今日も練習あるんだよね?」
「私いきたくないなー」
「舞台に立てるのはありがたいんだけどさ、別に名前付きの役じゃないし 大して出演するわけじゃないし」
「それなー。ズル休みしちゃう?」
4人は顔を見合わせ、深くため息をついた。
本来なら注意しないといけない。
「ちゃんと練習に来い」
しかし、今の現状を考えると簡単にそうは言えない。
朝の食堂に、穏やかな光と、
重い現実が静かに交差していた。
「後輩の指導とかって大変だな」
「立風館も同じです」
ふと、哪吒の視線が結依の後ろに行ってるのに気づいた。
「どうしました?」
結依たちが哪吒の視線の先を見ると、
アカデミアの制服に身を包んだ翠月と、
黄色のTシャツにグレーの短パンのラフな部屋着の黎夏が朝食を食べていた。
「みんな見てるから、明日はちゃんと制服に着替えてから朝ごはんだからね?」
「部屋着の子も沢山いるよ?」
「私たちはお邪魔してる立場なんだってば」
アカデミアの2人は朝から元気だった。
「アカデミアらしいですね」
「あの学校は学年の垣根どころか学科の垣根もないと言われているくらい自由と言われて聞いています」
「ウチらもそういう自由な校風見習わないといけないのかもね」
「かもな」
これは、トップスタァを目指す少女たちの物語。
そして……
世界を知る物語である。
第4話 完




