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SNOW WHITE INTERLUDE -白雪姫と七つの矮星-  作者: 二ノ宮純
第2章 「星が集う日は次なる祭典」
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第2章 「星が集う日は次なる祭典」 第7話

レッスン室には、既にエーデルをはじめとした俳優育成科の生徒たちと舞台創造科、そして「七つの矮星」たちが揃っていた。


広い空間に張りつめた緊張感が満ち、

照明の明るい光が床を白く照らしている。


鏡に映る無数の姿が、今日から始まる新たな挑戦を静かに予感させていた。


舞台創造科の生徒たちはテキパキと動き、

機材のチェックやセットの最終調整を進めている。


その手際の良さに、朱が思わず感嘆の声を上げた。


「すげぇ、手際よっ」


「立風館のみんなもこれくらい動いてほしいものですね」


葵が微笑みながら言うと、

結依が苦笑いを浮かべて肩をすくめた。


「あはは、立風館に百合々咲のレベル求めるのは酷なんじゃないかな……」


そのやり取りを聞きながら、翼はそっと息を吐いた。


七つの矮星が加わったこの空間は、

これまでとは明らかに違う緊張感に満ちていた。


ガラッ——


重い扉が開く音が響いた。


入ってきたのは、ひとりの男だった。


王立演劇歌劇団アンダルシアのロゼ・アディン。


その姿を見た瞬間、室内の空気が一瞬で引き締まった。


ほとんどの生徒は、昨年の厳しい指導を思い出し、

自然と背筋を伸ばす。


生徒たちが一列に並ぶ。


ロゼはゆっくりと視線を巡らせ、

低く、しかし力強い声で言った。


「久しぶりだな、お前ら。まさかこうも早く再開するとは思ってなかった」


その言葉に、昨年の“しごき”を耐え抜いた者たちの顔が引き締まる。


面構えが、確かに違っていた。


「SNOW WHITE 第2部、練習始めるぞ。配置につけ」


「はい!」


各生徒たちが一斉に動き出す。


その中でも、朱と黎夏は小声で囁き合っていた。


「あのおっさん、顔怖くね?」


「うん、めちゃ怖いよ……」


2人が顔を見合わせて小さく笑うと、

翠月がため息をつきながら二人の背中を軽く押した。


レッスン室に、再び熱気が満ちていく。


昨年の第1部を成功させた者たちと、

新たに加わった七つの矮星。

そして、外部から来たロゼの指導の下で——


未完の物語は、

今、本格的に動き始めようとしていた。



七つの矮星……。



招集された7人の少女たちは、それぞれ鮮やかな個性と色を持っていた。


その色は、物語の中で演じる「7人の小人」の役柄と、まるで運命的に重なり合っているかのようだった。


レッスン室の床に木刀の音と足音が響き渡る中、

彼女たちは台本を手に、熱のこもった演技を繰り広げていた。


「俺様が、リーダーだ!文句ねぇよな!?」


大きな声で胸を張るのは、神代朱。


赤髪のポニーテールを激しく揺らし、

力強く、荒々しいリーダー像を体現していた。


「ダルっ、そういうのいらないから」


気だるげにため息をつきながら返すのは、降星プラナ。


銀髪のツインテールを軽く揺らし、

冷めた視線で周囲を一瞥する姿が、

面倒くさがり屋の小人を完璧に演じていた。


「楽しいならいいじゃん!」


子供らしく元気いっぱいに笑うのは、柊黎夏。


黄色のショートヘアを弾ませ、

無邪気で明るい小人を生き生きと表現している。


「サボってないで、持ち場についてください!」


しっかり者の役にぴったりだったのは、神代葵。


青い長い髪を優雅に揺らし、

真面目で面倒見の良い小人を自然に演じ分けていた。


誰もが順調に進んでいるように見えた。


しかし、そう簡単にはいかなかった。


黎夏が、突然アドリブを入れた。


その一瞬で、翠月以外の矮星たちが動きを止めた。


マリナ・ゴールドエーカーが、静かに口を開いた。


「柊黎夏。アドリブを入れるのはいいけど、まだ全員の動きとセリフが完璧じゃない。他の人の練習の邪魔をしないで」


その声は穏やかだったが、

絶対的な威圧感を帯びていた。


金色の長い髪が照明に輝き、

赤い瞳が黎夏をまっすぐ捉える。


「なんで?この場面じゃあのセリフ合わないって」


黎夏が少し不満げに返す。


「独りよがりな判断。アカデミアだとそれが普通なの?」


空気が一瞬で張り詰めた。


たった一言で、この空間全体を支配したかのような、マリナの圧倒的な存在感。


「ゴールドエーカーの言う通りだ」


ロゼ・アディンが、演出席に座ったまま冷たく言い放った。


「アドリブを入れるなとは言わないが、それは全員の動きとセリフが完璧になってからにしろ」


演出家の言葉ともなれば、引き下がるしかない。


「……はーい」


黎夏はちょっと不貞腐れた返事をし、

唇を尖らせながら元の位置に戻った。


レッスン室に、わずかな緊張の余韻が残る。


殺陣のシーンのひとつに、7人の小人たちの戦闘シーンも含まれていた。



レッスン室の床に木刀がぶつかる乾いた音が響き渡る中、先陣を切ったのは、神代朱と神代葵の双子コンビだった。


立風館で「立風館の双剣」と称されるほどの実力者。


2人が同時に動き出した瞬間、空気が変わった。


朱の剣は力強く、荒々しかった。


赤髪のポニーテールが激しく揺れ、

一撃一撃に重厚な気迫が込められている。


木刀が風を切り裂く音が、

まるで本物の刀のように鋭く響いた。


対する葵は、流れるような水の剣舞。


青い長い髪が優雅に靡き、

しなやかでありながら、

決して隙のない動きで相手を翻弄する。


2人の剣が交差する瞬間、

力と柔の完璧な調和が生まれ、

見る者を息を呑ませる美しさがあった。


その所作は、誰が見ても「美しい」と言えるものだった。



しかし——



その技術のレベルに、他の生徒たちは到底追いついていなかった。


朱の力強い立ち振る舞いについて来られる生徒は、百合々咲にはほとんどいなかった。


百合々咲の生徒たちもそれなりのレベルではある。

しかし、神代姉妹はそれを遥かに凌駕していた。


「ちょ、ちょちょ危ない……!」


朱の太刀筋を避けきれず、

悲鳴を上げる生徒が続出した。


一歩遅れれば、本物の刀のように振り下ろされる木刀が、目前を掠めていく。


葵の流れるような剣舞に翻弄され、

バランスを崩して尻餅をつく生徒も現れた。


「立風館のみんななら、ちゃんと受け止めてくれるんだけどな〜」


朱が木刀を肩に担ぎ、言う。


「怪我はありませんか?」


葵が心配そうに手を差し伸べながら、

倒れた生徒に声をかける。


その仕草は優しいが、

剣を振るう時の彼女は容赦がない。


哪吒はステージの端からその光景を静かに見つめていた。


自分の剣捌きと比べても、

双子のレベルは明らかだった。


特に朱の力強さと葵の流麗さの融合は、

百合々咲の誰にも真似できない領域に達している。


翼は息を呑みながら、

2人の動きを食い入るように見つめていた。


(すごい……これが外部の力……)


ロゼは演出席から腕を組み、

淡々と指示を飛ばした。


「もう一度。今度は百合々咲側もちゃんと合わせろ。 矮星に振り回されるな」


生徒たちは歯を食いしばり、再び構えを取る。


七つの矮星の存在が、

百合々咲に新たな風を吹き込んでいた。


それは、刺激であり、

同時に大きな壁でもあった。




これは、トップスタァを目指す少女たちの物語。

そして……






世界を知る物語である。


第7話 完

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