第2章 「星が集う日は次なる祭典」 第6話
歴代エーデルの額縁が並ぶ廊下に、
静かな足音が響いていた。
カリスティックアーツ芸術学園から来たマリナ・ゴールドエーカーと降星プラナが、壁に飾られた肖像画を興味深く眺めていた。
「すごい……どれも全部見たことある人ばっか」
プラナが感嘆の声を漏らす。
銀髪のツインテールを軽く揺らし、
一つひとつの額縁に目を細めている。
「このエーデルは百合々咲の誇りという訳か」
マリナが静かに呟いた。
金色の長い髪が廊下の光に輝き、
赤い瞳には強い好奇心と、
わずかな挑戦的な光が宿っていた。
その時、背後から低く落ち着いた声がかけられた。
「カリスティックの王とは、大それた異名を得たものだな」
二人が振り向くと、柱に寄りかかるように立っていたのは張哪吒だった。
黒髪を短くまとめ、鋭い視線でマリナを射抜いている。
「えっと……誰?知ってる?」
プラナが小声でマリナに尋ねる。
百合々咲の生徒だということは分かるが、
面識はなかった。
「張哪吒か」
マリナが静かに答えた。
「よく覚えていたな」
かつて哪吒の栄光を奪った、あの黄金の輝き——
哪吒にとっては、因縁のある相手だった。
マリナは哪吒をまっすぐに見つめ返した。
その目は絶対的な自信に満ち、
一切の怯みを見せない。
「私は、お前に——」
言いかけた瞬間、八重が素早く間に割って入った。
「哪吒、やめとけ。彼女たちは学院の客人だよ」
八重の声は穏やかだったが、
どこか強い意志が込められていた。
哪吒は無言で視線を外し、
そのまま静かにその場を去っていった。
「すまない、彼女プライドが高いから」
八重が軽く頭を下げて謝罪する。
「大丈夫。私は敵を作りやすいタイプの人間らしいからこういうことは慣れてる」
マリナが淡々と答えると、
八重が苦笑いしながら肩をすくめた。
「王ってのも大変なんだね」
「よく言われる」
少し重たい空気が流れる中——
「カリスティックのみなさん!」
廊下の先から翼が小走りにやってきた。
「あの、夕食のお時間になりますので来ていただけますか?」
八重が翼の肩を軽く叩き、
小さく微笑んだ。
「ナイスタイミング」
「何がです!?」
翼がきょとんとする中、八重は軽やかに去っていった。
「行こ」
プラナの問いかけに、マリナは「あぁ」と短く返事をする。
翼が案内しようと背中を向けた瞬間——
「お腹空いた〜」
少女の声が、突然響いた。
「え?」
翼が慌てて振り返るが、
そこにいるのはマリナとプラナだけだった。
少女の姿など、どこにも見当たらない。
プラナが少し苦笑いしているが、
マリナは何事もなかったような顔をしていた。
「どうした?」
「あ、いえ……空耳かな……??」
翼は首を傾げながら、再び歩き始めた。
しかし、その声は確かに耳に残っていた。
幼く、無邪気で、どこかマリナに似た声
これは、トップスタァを目指す少女たちの物語。
そして……
世界を知る物語である。
第6話 完




