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SNOW WHITE INTERLUDE -白雪姫と七つの矮星-  作者: 二ノ宮純
第2章 「星が集う日は次なる祭典」
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第2章 「星が集う日は次なる祭典」 第5話

百合々咲音楽学院のカフェテラスは、

午後の柔らかな陽光に包まれていた。


木々の隙間から差し込む木漏れ日が、

テーブルクロスを優しく斑に染め、

風がそよそよと葉を揺らす音が、

心地よいBGMのように響いている。


「ここが百合々咲のカフェなんだ……!」


黎夏が目を輝かせて辺りを見回していた。


アカデミアにあるカフェに比べると、

明らかに高級感があり、洗練された雰囲気が漂っている。


まるで子供のように興奮した様子で、

メニューを眺めたり、並べられたパンやケーキを指差したりしている。


「ねぇねぇ、翠月すごいよ!このパン、めっちゃ美味しそう!」


「もう……アカデミア代表がこんなんでいいの?」


翠月はため息をつきながら、

隣で小さく肩を落とした。


緑髪のショートヘアを軽く整え、

黎夏の子供っぽい興奮に少し照れくさそうにしている。


黎夏は構わずショーケースに顔を近づけ、

目をキラキラさせながら言った。


「このパンとか美味しそう!持ち帰りとか出来るかな? お土産にしたら“みんな”喜びそう!」


翠月もつられてショーケースの中の焼き立てのパンを見つめた。


確かに、美味しそうだった。


育ち盛りの“子供たち”が喜んで食べそうな、

香ばしい匂いが漂ってくる。


「確かに美味しそうだけど……持ち帰りは出来ないんじゃないかな?」


すると、すぐ近くのテーブルから優雅な声がかけられた。


「あら、出来ますわよ」


2人が振り向くと、そこにいたのは——


香取砂月だった。


優雅にティーカップを置いた砂月は、

穏やかな微笑みを浮かべて2人を見ていた。


「練習の休憩中や寮に持って帰る子もいるくらいですわ。 包装もできますので、遠慮なくどうぞ」


翠月は砂月の姿に、思わず見惚れてしまった。


完璧なお嬢様。


気品ある仕草、柔らかな微笑み、

そして自然と漂う気高さ——

初めて本物のお嬢様を見た気がした。


「本当に!?じゃあ翠月、たくさん持って帰ろ!」


黎夏が目を輝かせて翠月の腕を引っ張る。


翠月はまだ少し呆然としながらも、

砂月に小さく頭を下げた。


「ありがとうございます…… 。突然すみません。私たち、アクターズミュージカルアカデミアから来ました」


砂月は優しく微笑んだ。


「存じておりますわ。D4の皆さんですよね?楽しみにお待ちしておりました」


カフェテラスの木漏れ日が、

3人の上に優しく降り注いでいた。


新しい出会いと、

これから始まる共同作業への予感が、

春の風と共に、静かに広がっていった。



昔の古巣に戻ってきた結依は、

ゆっくりと校舎を歩いていた。


桜の花びらが風に舞う中、

彼女は一つひとつの景色を、

静かに胸に刻み込むように見つめていた。


友人と一緒に学んだ教室。


窓から差し込む光が、

机の上に柔らかく落ちていた記憶。


友人と語り合ったカフェテラス。


木漏れ日の中で笑い合った、あの穏やかな時間。


日夜練習に明け暮れたレッスン室。


汗と情熱が染み込んだ床の感触が、

今も足の裏に蘇る。


学院を去ったのは、ちょうど1年前。


そのどれもが、今の結依にとっては懐かしく温かく、胸に染み入るものだった。


「結依ちゃん!」


突然、明るい声が響いた。


声がした方を向くと、茶髪のポニーテールを揺らして走ってくる少女の姿があった。


かつて共にエーデルとして学院の頂点に輝いていた少女——鎌田二乃。


「……二乃」


結依の声は小さく、しかし確かに響いた。


二乃は結依の目の前で足を止め、

息を切らしながら、じっと彼女を見つめた。


「本当に……結依ちゃん……だよね?」


この1年、全く連絡を取れなかった。


意図的に避けていたのかもしれない。


百合々咲の繋がりを、

すべて消し去りたいと思っていた時期もあった。


二乃の目に、みるみるうちに涙が溢れそうになっていた。


こんな時、どんな顔をすればいいのか。

結依は胸の奥が痛んだ。


二乃には、悪いことをした。

最後の最後まで、私を引き留めようとしてくれた。


しかし、私はその手を振り払った。


あの手を掴んでいたら……

今の私は、きっと違っていただろう。


でも——


「うん、ごめんね……ただいま、二乃」


結依は静かに微笑んだ。


後悔はしていない。


立風館で出会えた新しい仲間と共に、

また羽ばたく道を選んだ。


それが、今の自分の答えだった。


二乃が、堪えきれずに結依の胸に飛び込んだ。


「おかえり……おかえり、結依ちゃん……!」


二乃の声は震え、

温かい涙が結依の制服に染み込んでいく。


結依は優しく二乃の背中を抱きしめた。


「ただいま……ただいま」


2人の止まっていた時間が、

再び、静かに動き出した。


桜の花びらが、2人の周りを優しく舞う。


講堂の鐘が遠くで鳴り、新しい季節の風が、

2人の髪をそっと揺らしていた。




これは、トップスタァを目指す少女たちの物語。

そして……





世界を知る物語である。


第5話 完

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