第2章 「星が集う日は次なる祭典」 第4話
百合々咲音楽学院の正門から、桜の並木道を7人の少女たちが静かに歩いてきた。
それぞれの学校の制服に身を包んだ彼女たちは、
まるで異なる光をまとった星のように輝いていた。
立風館の伝統的なセーラー服、
カリスティックの洗練されたブレザー、
アカデミアの最新鋭のデザイン——
3つの学校の個性が、春の風に揺れる桜の花びらと共に、 百合々咲の空気に溶け込んでいく。
道の左右には、百合々咲の生徒たちが自然と分かれ、 人垣を作っていた。
まるで王の凱旋を祝うかのように、
道が開かれている。
「あれが……カリスティックの……?」
「待って、あれD4の黎夏ちゃんじゃない!?」
生徒が興奮気味に囁き、
周囲から小さなどよめきが広がる。
黎夏は手を振り、ファンサービスを始めようとしたが、隣を歩く翠月が慌ててその腕を押さえた。
「大人しくしててよ……恥ずかしい……」
翠月は顔を真っ赤にしてうつむき、
黎夏は「えー!」と不満げに唇を尖らせた。
7人の少女たちの後ろには、
白羽結依の姿があった。
その瞬間、道の両側から温かなざわめきが起きた。
「あれって……白羽先輩……?」
「本当だ……」
結依を見つめる目は、畏怖でも蔑みでもなかった。
皆の視線には、ただ純粋な「おかえり」と言わんばかりの、 温かみと懐かしさが溢れていた。
結依は静かに前を向きながらも、
その視線のひとつひとつに、
胸の奥が熱くなるのを感じていた。
校舎に向かう道の先に、
講師のドロシー・アンが立っていた。
優雅に微笑みながら、
7人の少女たちを迎え入れる。
「ようこそ、“七つの矮星”の皆さん。理事長がお待ちです。こちらへどうぞ」
ドロシーの声は穏やかでありながら、
学院全体に響き渡るような威厳を帯びていた。
7人の少女たちは、
百合々咲の生徒たちの温かい視線に包まれながら、
ゆっくりと歩みを進めた。
桜の花びらが、風に舞い、
7人の肩に優しく降り注ぐ。
ここに、
百合々咲と3校の才能が集う。
SNOW WHITE第2部を完成させるための、
新たなの物語が今、幕を開けようとしていた。
理事長室に通された7人の少女たちは、
静かに部屋を見回した。
重厚な木の扉が閉まる音が響き、
柔らかな日差しがレースのカーテン越しに差し込んでいる。
古い書棚に並ぶ歴代理事長の肖像画や、
学院の長い歴史を物語る賞状やトロフィーが、
部屋全体に荘厳な雰囲気を漂わせていた。
理事長——ミリー・マーキスが、
優雅に椅子に腰を下ろしたまま、
穏やかな微笑みを浮かべて7人を見つめた。
「七つの矮星の皆さん。長旅ご苦労さまでした。
ようこそ、百合々咲音楽学院へ」
その言葉に、7人の少女たちの視線が一斉に集まる。
マリナ・ゴールドエーカーが、一歩前に出た。
金色の長い髪を優雅に揺らし、
赤い瞳でまっすぐミリーを見つめる。
「伝統ある百合々咲の舞台に立てるのは、こちらとしても大変光栄なことです。しかし、なぜ私たちを招いたのか、その真意をお教え願いたい」
マリナの声は落ち着いていて、しかし芯の強さを感じさせた。
ミリーは静かに微笑んだまま、ゆっくりと答えた。
「流星を超えるためです」
その一言に、部屋の空気がわずかに張りつめた。
「この前のSNOW WHITE、観劇させていただきましたけど、あれほどの公演ができるなら……」
プラナが少し割って入るように言った。
ミリーは穏やかに首を振り、続けた。
「実力だけなら問題はありません。しかし、観客が求めるのは更なる進化です。星は交わることで更に輝きを増すものです」
腕を組んで難しい顔をする朱が、
隣の黎夏に小声で囁いた。
「な、あのおばさん何言ってるの?」
「分からない……」
黎夏も首を傾げ、完全に理解できていない様子だった。
葵と翠月は、揃って大きくため息をついた。
ミリーは7人全員を見回し、
静かでありながら力強い声で言った。
「あなたたちの力を、是非貸していただきたい。
流星を超えるために」
理事長室に、重くも熱い沈黙が落ちた。
7人の少女たちは、それぞれの想いを胸に、
ミリーの言葉を噛みしめていた。
百合々咲の桜が窓の外で静かに舞う中、
新たな物語の歯車が、ゆっくりと回り始めた。
これは、トップスタァを目指す少女たちの物語。
そして……
世界を知る物語である。
第4話 完




