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第2話  再開と別れ

見つけて下さりありがとうございます!

品性に欠けた人間がいっぱい出てきますが、スカッとするはずです!

―どうぞ、お楽しみください…!



「ラテ…」


「ラテさん…」


王都極刑囚人収監所と書かれた石造りの門を見上げていた二人がこちらを振り向いた。

二等辺三角形状に視線が交差すると、世界一大切な人達が俺の名前を呼んだ。


「うん、また会おう…」 


力なく片手を振り、護衛に睨まれながら別れを告げた。

かつてのギルドメンバーは、各地の牢にバラバラに投獄されるそうだ。


古い石で作られた収監所に足を踏み入れた。

痩せこけ、顎にはマバラなヒゲの剃り残しを放置した護衛と二人きりで足を進める。

虚ろな死んだ魚の目をしながら、自身の抜けていった魂を追うように視線を彷徨わせながら皮肉に口を開いた。


「ふん、随分と仲間に好かれているようだな…」


不意に護衛の足が止った、その先を見ると鉄格子で閉ざされた底冷えする壁と床と天井だけで構成された無の空間が広がっていた。

金属が擦れ合う音が鼓膜を打った。

護衛がベルトに掛けられた複数の鍵たちから、一つを手に取りカチャカチャと鍵を開けた。その姿をぼんやりと見つめながら、無意識に言葉を並べた。


「あぁ、俺の愛した数少ない友人さ」


視線で誘導され潔く牢に入る。

冷たい石の地面に何も見えない窓、冷え切った室内、まさに死を待つ人の孤独な空間だ…。


「…気持ちが悪いな、反吐が出る」


「…は?」


よく喋ると思っていれば、人間の基本も知らぬような口を利いた。

トキン、トキン。と、心臓に一本ずつ丁寧に杭を刺すように、鼓動が高鳴る。


「お前は…殺されたいのか?」


俺の怒りに、クツクツと笑い声をあげる。

可笑しそうに身体を丸めて感情を露にし、

自身の醜態を雄弁に語り出した。


「クッ…良い見ものだな!護衛である俺が、かつて頭を下げていたギルドの男が今では、無力なただのヒーラーだ…!」 


そこで一区切りすると、口角を三日月のごとく上げに上げ、シラフかを疑うほどに顔を紅葉さたまま口を開いた。


「実に気分が良い…!」


き、きめぇ…。

コイツ関わっちゃいけないタイプだわ。


「だが、仲間の女と眼鏡を掛けた男…

女は我が強そうだし、男は妙に腰が低かった…まぁ、どちらもいいツラにそそる身体つきだったがな」


舌を出して唇を右から左へと撫で回すと、いかに自分の目がいかに良いかを伝えるべく、激しく持論を展開させた。


…コイツは俺の地雷を踏みにじるのが趣味らしい。悪趣味にも限度ってものがあるだろ。


「やめろ…。お前の様な邪気のある野郎は、お呼びじゃねぇんだよ」


あ〜、胸糞悪ぃ…。

空気が凍りつき、軽蔑の視線が向けられる。

そんなことはお構いなしに、一度怒りのメーターがぶっ壊れると止められない。


「黙れ、お前に俺らの何が分かんだよ…?」


自分をなだめるように呟いた。

護衛は、呆れたように手を顔に当て問い返された。


「…何が言いたいんだ?」


「いや、質問を質問で返すなよ…あと、俺の仲間に手をだすなよ?」


悟られないように口を利くが、内心糸が絡まりあっていた。


だめだ。止まれ、俺。止まれ…。


内側に潜めていた魔力が、怒りに反応し片鱗を見せ始めた。ぶわりと身体中に熱をこもった魔力が流れ始め、足元からバイオレット色の呪文が浮かび上がる。

 

「クッ、せいぜい必死にガキが口遊びで満足していればいいさ、明日にでも二人して俺のものにしてやる」


あ、無理です。


「レコグニションサンダー」


「え…?」


気づけば呪文を口走っていた。

俺の足も元で紡がれていたバイオレットの魔法陣から一筋の閃光が、命を授かったように俺の指の軌道に沿って護衛の足先を目指し、石の隙間に入り込み走りだす。


パチパチとした違和感が地を揺らす。

今使った魔法は、半径10〜20メートル以内の心臓の働きの有無に関わらず俺の指示により、無条件に魔法が発動するものだ。

本来ならば全身治癒魔法として、俺の足下に出来た魔法陣が俺の意思で連鎖し最大十人まで適用可能な即効性治癒魔法だ。

そこに、基礎魔法をちょ〜ぉと加えれば攻撃魔法に早変わり。


てなわけで…


「…!なんッ、ぃだっ!」


護衛の嬉々としていた表情が割れていき、痺れる痛みに顔を歪めた。


おぉ〜、人に試すは初めてだけど使えそうだな…。


俺も試した事があるが、自身の身体を避雷針として魔法に認識させて稲妻魔法を付与させる。体内を駆け巡る痛みは耐えれるが、血液を少し沸騰させながら尋常ではないスピードで加速し、つま先から頭の先まで常に何が弾ける違和感に襲われ段々とめまいが起こる物だった。

数分もすれば戻るけど…。


「…ぃ゙ッダァ!クソっ、昨日飲ミッ過ぎたせいダッ!」


チッと舌を鳴らして鍵を閉めると魂にからかわれるようにフラフラと足速に去っていった。


あの護衛が馬鹿すぎて魔力に気付かれなかったわ…疲れた。

ドサッと灰色の石の上に重たい腰を下ろした。


―俺は魔剣士レオンを殺した。


常に頭の中はこの事で埋まっている。

その事態が俺の胸に毒を垂らす。

泥を被るのは俺だけでいい…


さて、どうやって脱獄しようか…。

ここに居ても意味がない。

解除魔法を使い、手錠を解除する。

指先を鉄格子に添え、紫色の電流を纏いながら指先から放たれたソレが、鉄格子に蜘蛛の巣のようなヒビを入れる。


…いける。


そう思ったのも束の間、


コッコッコッ…


耳障りな足音がこちらに近づいてくる。

無駄にデカい足音が、アイツの態度のデカさを表す様だ。


「ラテ、会いたかったよ…!」


なんで、なんでお前がいるんだよ…。

ねっとりとした、演技がかった、甘ったるい裁判所で聞いた男の声が石造りの刑務所の中にこだまする。

瞬時に手錠を掛け直す。


「魔剣士レオンを殺したのは、なんでだろう?何かしら理由があったんだろうねぇ…。

本当は―…なんてね?」


あぁ、口を開かないでその名前を醜い畜生が口にしないで…


「可哀想に、可哀想に…」


鉄格子の隙間から、毛のジャングルと化した太い腕で俺の頬を撫ぜる。

ゾクゾクと鳥肌がたつ。

魔力は、生きた心地がしない程に冷たい物へと変化していた。血の通った人間とは程遠い生き物になった気分だ。

薄っぺらい温度のない感情を貼り付けた笑みを浮かべると、


「私が助けてしんぜよう」



手を胸に添え、身体を前に折りうやうやしく頭を下げ、アーモンド型の霧がかった瞳で俺を見据えられた。


お読み頂だきありがとうございました!

いかがでしたでしょうか…?

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