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第1話 ヒーラー失格

王都最高裁判所でのお話です!

ラテと他の二人との絡みもでてきます。

どうぞ、お楽しみください…

「まだだ!まだ足りぬ!!」


「レオ…ン!」


激しく魔剣と魔法がぶつかり合う鈍い音が辺りを轟かせる。


かつての親友が炎をまとった大剣を止まることなく振るい、なぎ倒された木の数々が憎らしそうに足に絡まりつく。

が、そんなことを気にする暇はなく、振りほどきながら呪文を唱え続けた。


「貴様!なぜ今までその力を使わなかったんだ!」


…これは、れっきとした仲間割れだ。


「めんどいなぁ…!レオンはもう、

仲間じゃないから、どうでもいいだろ!」


あいつは魔力を宿した大剣を振るいながら、可笑しそうに腹を抱えて笑った。


「ラテ、お前とはみじんも嗜好が合わんな!」


「くッ…それはお互い様でしょ…!」



呪文を唱える続けながら、俺はギルドで初めて仲間の1人に回復魔法をかけなかった。

正しくは…―。


むしろ、傷を付けた。


強く握った拳から滴り落ちる、真っ赤な血と、耐えられずに目から零れ落ちる温かい雫を、ただただ、流しながらこんな事しか出来ない無力な自分に心底腹を立てた。


俺は…


ヒーラー失格。




「聞いているのか!アロっ…ラテ!」


来たらなしい汚水でも飲んだかのようなしゃがれ声が鼓膜を打った。


あぁ、そうだここは王都最高裁判所だっけ…

思い出に浸ることも許されねぇのかよ。

…つうか、その汚え名前で呼ぶな。虫唾が走る。


デカデカと椅子からはみ出す程によく蓄えられた身体を震わせ一つ咳払いをすると、


「…よって、レオンギルドに所属していた 

ステア、メアリー、ラテを死刑と処す!」


判決を言い下した。

静まり返った裁判所で国王が声高らかに裁きを下す。

辺りからは、不安と安堵が入り混じったざわめきを感じた。


そして、肉で埋もれた顔の輪郭が不確かな巨漢が呟いた一言が今、ここで歴史を刻んだ。


「あいつらは…魔剣士殺しだ。」


ムカムカと魔力が血液に逆流し、心臓へと運搬され瞬時に沸騰しだす。

居心地の悪さに俺はボロい椅子から立ち上がった。キィ―と憐れむような悲鳴を椅子が発した。


アイツの耳を汚染させる声を聞かいないために、脳の聴覚神経を一部遮断魔法で無意識に絶っていた。


巨漢が何かを叫ぶように口を開き黄ばみに黄ばんだ歯でヨダレを引き合うが、そんなのお構いなしに足を進める。

どうやら他のギルドメンバーも同じ思いらしく俺を筆頭に席を立った。

無言のざわめきが扉に向かって歩く俺の背中に矢のようにささる。


…汚れた豚がお話が上手なこって


重い足取りで扉の前まで来ると、手の甲に国王家の紋章である三つの鍵に龍が巻き付いた入れ墨を入れている護衛達に道を防がれた。


じゃまいな、どけろよ…。

そう腹の底で思った瞬間、ぶわりと靴先からバイオレット色の光線が足下の真っ赤なキツネだか、鳥だか何だかの毛皮で出来た無駄に高価な絨毯に炎が燃え上がった後のように焦がされた穴が空いた。


―スッ


瞬きをする間に絨毯は何もなかったように元通りになっていた。護衛を目で殺し、仲間に視線を移すと全てを吹っ切ったようなカラッとした向日葵を思わせる笑顔を咲かせていた。彼女に親指を立て無言で例を伝えると、その横で呆れたように口をへの字にした彼が眼鏡のレンズ越しに少し涙を浮かべていた。


「ふぇ〜、護衛さんこわーい!」


少々羽目を外し一人で騒ぎ立てた。

別に恥じらいなどは一切ない、だって仕方ねぇし…。

他の二人は引き気味で見ていたが、途中から一人は腹を抱えて大爆笑しだした。


もう一人の参加もあり数分粘り続けた結果、護衛の顔が怖いと言う理由で別の真面目そうな腕利きの老人護衛にに交代してもらった。


…大人二人が何分も床に張り付いてヤダヤダ駄々をこね続ける光景は何ともカオスだっただろうな…。


無駄に長い廊下を歩きながら、皮肉めいた言葉を老いた護衛にかけ二、三言ほど交わした。


別の護衛に引き渡され護衛に馬車へと荒々しく乗せられた。

中には息をするのも苦しい程に何人ものガタイの良い護衛が乗り込んでいる。

ギルドメンバーは一人一台ずつ馬車が用意されてるようだ。


せっま…、もうちょい離れてくんね?


出来るだけ身体を小さく丸めて座る。

馬車の中のが揺れると鼻息荒く、馬が声を上げると走り出した。

窓から流れる様に移り変わる景色を、目を凝らして縋る様に見続けた。


ギルドメンバーの皆で、何度も何度も歩いた場所を、最後に脳へ焼き付ける。


刑務所の前まで来ると、馬車は王都へと帰って行った。

俺に抵抗意思はないと思ったらしく、一人の護衛に渡された。

何とも不用心なこって…。


数歩足を進めると、

見覚えのある後ろ姿を見つけた。


小さくなった、ボロボロの後ろ姿を…。


裁判所で会ったばかりの二人がいた。

桃色の髪を海の様になびかせた一人の少女と、眼鏡の奥から、不安そうに覗き込む一人の少年が俺を捉えた。







お読み頂だきありがとうございました!

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