第98話:疲労困憊
ガーエイの動きが緩慢になり、やがて止まったのを見届ける。
「倒した……!」
倒せた事への安堵感が押し寄せてくる。
ルシュがシャグと戦っているが、心配しなくても良い筈だ。でも万が一の事もある、手助けに行かないと。
そう思い振り向こうとすると、痛みがわき腹を襲う。
「ぐぅ!」
立ち上がろうとしたが、それを断念する。
気が緩んだからか、痛みがさっきより増している気がする。
戦っている間はそれどころではなかったが、終わった途端に体が正直になる。
まず傷薬を飲んでからか……
そう思った時に後ろから声が聞こえる。
「ヨウヘイ……!」
ルシュの声だ。
痛みが強くならないようにゆっくり振り向く。
ルシュがこちらに向かってきている。
こちらに来ているという事はシャグは倒せたようだ。右腕には白い何かと茶色い何かが付いている。シャグの粘液糸だろうか。
しかしそれ以上に気になる点がある
。ルシュの足取りがおぼつかない。重い足取りだ。
「ルシュ……?」
ルシュはふらふらと俺の元まで辿り着き、座り込んだ。
「ハァ……ハァ……ヨウヘイ……大丈夫?」
ルシュが心配してくれるが、彼女の方が大丈夫ではなさそうに見える。
「俺は……いてて、大丈夫。ルシュこそ……」
ルシュは大きく肩を上下させ、呼吸を整えようとしている。
それで察する事が出来た。酷く疲労している。
マーテンを出てからここまで、数時間歩きどおしで、途中でガワと戦い、慣れないけもの道を進んできた。
そしてシャグとの戦闘。俺が傍にいながら、ルシュの限界に気付いてやれていなかった。
「ルシュ……ごめんな」
自然と謝罪の言葉を述べる。
ルシュは何も言わずに俺に付いてきてくれたのに。
俺の言葉にルシュは不思議そうな顔をする。
「……どうしたの、ヨウヘイ?私は、大丈夫、だから……ヨウヘイは傷薬、飲んで」
ルシュが俺に傷薬を差し出してくれる。
自分が疲れ果てているのに、まず俺の心配をする。
「ありがとう」
俺はルシュから傷薬を受け取り飲み干す。
段なら顔を歪める苦みも、この時は有り難く感じた。




