第97話:ルシュvsシャグ
ヨウヘイがガーエイとの戦いを始めた時、一方のルシュは、
「ハァ……シャグ……!」
シャグの前脚を振り払い、シャグに向きなおす。
ルシュの前に立ちふさがる体長1メートル以上はある緑色の虫型の魔獣、シャグ。
駆け出しの冒険者では荷が重いと言われている魔獣。でも私は一度倒してる、私なら苦戦する相手じゃない。
メイスを強く握りなおす。
早く、早く倒してヨウヘイを助けないと。
ヨウヘイが戦っているガーエイは未知の魔獣。
情報はギルドで得ていても実際に対峙するのは初めてだ。
私なら、ガーエイには絶対に負けない。でもヨウヘイは……分からない。だから。
シャグに向かって踏み込もうとする。
瞬間、メイスを持つ右腕が強く後ろに引っ張られる。
「!?」
右腕は後方にある木にぶつかり、体勢を崩しそちらに動いてしまう。
右腕を見ると、白い粘液糸が付いている。腕が後ろにある木に縛り付けられている状態になっていた。
シャグが近づいてくる。
「くっ……」
右腕に力を込める。ベリベリと大きな音を立て、木の幹の一部を引きはがしながら右腕を前に突き出す。
私の力なら問題なく引きはがせる、大丈夫。
眼前に迫るシャグ。
粘液糸と引きはがした木の一部が付いていて、やや不自由な状態にある右腕をシャグに向かって振る。
シャグの頭部にメイスが当たる。かなりの強度を誇るシャグの甲殻が歪む。
衝撃でシャグが後ずさる。
「……ハァ……やれる……!」
大丈夫、倒せる、早く倒して、ヨウヘイを……
直後、ルシュの身体は重く沈み込んだ。
「……?」
おかしい。足に力が入らない。
腕も、さっきより重い。
シャグの糸を引きはがした時から、じわじわと体の奥から何かが抜けていく感覚があった。
戦いの最中は気にならなかった。でも今、確かにある。
私の意思に反して体が…動かない…。
でも
ヨウヘイを助けるまでは、動いて……!
腕にありったけの力を込め、メイスをシャグに向かって投げる。
甲高い音が響く。
私に殴られて窪んでいる部分に投げたメイスが当たり、シャグの頭部の窪みは更に深くなる。弾かれたメイスはそのまま森の中、茂みの奥へと消えていった。
「ハァ……ハァ……」
シャグを支えている脚はその力を失い、その身体を支えられなくなり、地面に沈み込む。
……倒した様だ。
シャグを倒した、次は……
「ヨウヘイ……!」
ヨウヘイの方向を見ると、そこには膝をついているヨウヘイの姿があった。




