第94話:未知の襲撃
森に踏み込む。
木々の密度が高く、日があまり差し込んでこない。クステリの森を思い出す深さのある森林だ。
(シャグは目はあまり良くないですが、特に音に対して反応しますので、注意してくださいね)
モアの言葉を思い出す。
シャグに限った話ではないが、他の魔獣もいるという話なのだから、音を立てないに越したことはない。
特に今回踏み入れた森は魔獣の危険度が高いので、尚の事注意が必要だ。二人とも自然と足音を抑えながら進んでいた。
森に伸びるけもの道を進む。時折立ち止まり、地面を注視する。
時折きらきらした石が視界に入る。
俺はその中の一つを拾い上げ、ルシュがそれを覗き込む。
「これ、黄光石だよね?」
「だと思う、でもこれではダメそうだな……」
石は光っている部分が非常に小さく、大半の部位はその辺りに転がっている普通の石と変わらない。
サルグからの依頼では大体拳の半分くらいの大きさの黄光石が欲しいとの事で、渡されている麻袋の半分くらいは詰めて欲しいと言われている。
周囲を見渡すと、他にも黄光石はあるが、どれも小さなものばかりだ。
「もう少し奥に行ってみようか」
俺の言葉にルシュは頷き、更に森の奥へ足を進めた。
***
数十分は歩いただろうか。
辿ってきた道を見失ってはいない。
途中、それなりの大きさの黄光石が落ちていたので拾って麻袋に入れている。
岩肌がむき出しになっている場所が良いらしいが、今のところそれらしいものは見つかっていない。
周囲を見渡しつつ先に進もうとした俺の服をルシュが掴む。振り返ってルシュを見ると、ルシュが小声で囁く。
「音がする」
立ち止まって耳を澄ませる。
距離は遠いがガサガサと音がする。音の方向を見ると、遠くで何かが動いている様子が見える。
何が動いているかまでは俺の目では分からない。
「シャグだと思う」
ルシュが声を潜めて話す。
身動きが取りづらい森の中で魔獣と出くわすと厄介だ。
特にシャグの場合、糸で動きを止めてくるので、俺は無論ルシュも油断は出来ない。
シャグの動く音が聞こえなくなるまで俺達はその場に待機した。静かになったので移動しようとしたその時、
俺は右肩に強い衝撃を受け、後ろに倒れこんだ。
「ヨウヘイ!」
ルシュが俺の傍に駆け寄る。
俺の右肩に当たった何かは既に視界に無かった。
シャグではない、何かが別にいる。
ルシュが前方を見てメイスを構える。
俺も右肩の痛みに耐えながら立ち上がり同じ方向を見る。
そこには体中に花を咲かせた物体が、鞭のようにつるをしならせながら佇んでいた。




