第93話:黄光石のある森へ
マーテンを南東に出て街道をしばらく進むと、南東から北西へと流れる小川がある。
マーテンの南東には大きな湖があり、その湖から流れている川の一つだ。
シャグは水辺には近寄らないので、この川に沿って北西へ向かうのが比較的安全なルートだとモアさんが教えてくれた。
黄光石はこの川をしばらく先に進んだ所から森林地帯の中で採れるらしい。
黄光石はマーテン周辺で採れる鉱石で、その名が示す通り黄色く淡く光る石だ。
マーテンで生産される家具や装飾品に使われる事が多く、特産品の一つになっている。
希少性は宝石ほどは高くなく、それなりの数が採れるので重要ではあるが貴重な物ではないらしい。
それなりの数が採れるなら何故今回の依頼があったかと言うと、このマーテンの南東の丘陵がある森林地帯では質の良い黄光石を採る事が出来るからだ。
サルグの勤める工房では良質な黄光石が不足しており、その補充が必要になったとの事
。
しかしこの森林地帯はシャグを始め危険度の高い魔獣が徘徊している場所で、ここでの採掘や採集は手練れの冒険者が受け持つ事が多いという。
俺達はマーテンの南からまっすぐ森林地帯に入るのは危険だとして、
南東の街道から川沿いに北西へ進む回り道ルートを選んだ。
川沿いは小石や砂が堆積した沢になっていて、
今は河川の水量がそこまでないので比較的平坦な地形を進む事が出来る。
シャグは水辺に近寄らないとはいえ、他の魔獣が居ない訳ではない。
川沿いに進み始めてから、既にガワ2体と交戦している。
討伐依頼で戦う事も多い魔獣なだけに、それほど苦労する相手ではなかった。
だが魔獣が出る場所という事は、休憩を取るのにも安心出来ないという事だ。
油断は禁物だと、二人で改めて確認し合う。
魔獣は解体すれば素材を街の店で売る事も出来るが荷物が増えてしまうので、
このガワについては牙だけ回収した。
川沿いに進み始めて1時間程経っただろうか。
川の水底が太陽に照らされ、黄色く反射するようになってきた。
ルシュも気づいたようで、川に近付いて底を凝視している。
光を受けてきらきらと輝く川底は確かに普通の石とは違って見える。
黄光石というのはこういう場所で採れるものなのか。
「この辺りから森に入れば良いのかな」
ルシュが問いかけてくる。
「モアさん達の話の通りなら、この辺りで良さそうだな」
俺とルシュは少し身構え、沢から離れて慎重に森の中に足を踏み入れた。




