第95話:魔獣ガーエイ
俺とルシュの目の前に立ちふさがった怪物を見る。
葉、茎、花の集合体と言うべきだろうか、植物の塊とでも言える見た目だった。
しゅるしゅる、ガサガサと葉や茎の擦れる音が鳴っている。
「コイツは……ガーエイ!?」
依頼を受ける時にこの一帯に徘徊する魔獣の一種としてギルドで説明を受けている。
おそらく間違いない。
ガーエイの武器は鞭のように振り回される「つる」。そして……
ガーエイが怪しく揺れる。
「!」
咄嗟に左に動く。俺の居た地面が3、4箇所弾痕のようにえぐられた跡が残る。
「危なかった……」
高速で放たれる種子。
銃弾とまではいかないだろうが、当たれば結構なダメージになるだろう。
右肩の痛みがまだ残っている。
最初の一撃がこれだったのか。
ガーエイと俺達の距離は4、5メートル程。
近付かなければ攻撃を当てられない。
ガーエイがつるを振り下ろす。
姿勢を低くし踏み込もうとするルシュの右腕につるが巻き付く。
「んっ!」
ルシュが小さく唸る。
「ルシュッ!」
ガーエイはつるを振り上げようとする。だがルシュは姿勢を崩すことなく踏みとどまっている。
「ヨウヘイ、今のうちに!」
ルシュの言葉に俺はガーエイに向かって駆け出す。
ガーエイが動くよりも早く、俺はクラブを叩き付けた。
鈍い音がしてガーエイの身体が歪む。
ルシュに巻き付いたつるが彼女の腕から解かれる。
「手ごたえあったか……!?」
分からない。体を捉えたのは間違いないが、ガーエイの身体は植物の葉や茎の塊だ。
衝撃を吸収して歪んでいるだけかもしれない。
瞬間、目の前に緑色の一閃が見える。
「ぐあっ!」
身体に強い衝撃を受ける。
ガーエイのつるを正面から受け、後ろにのけぞる。
「ヨウヘイ!」
ルシュがガーエイに攻撃するために駆け出そうとする。が、ルシュは後ろを振り向く。
直後、甲高い音が鳴り響いた。
「なんだ!?」
俺は一瞬だけ後ろを見る。
そこには体長1メートルを超える、緑色の巨大な虫の姿があった。
「シャグ……!」
ルシュが呟く。彼女はメイスでシャグの鋭い鎌のような前脚を受け止めていた。
さっき俺達が待機していた間に距離を詰めてきていたのか。
「私は大丈夫、でも……!」
「挟み撃ちか……!」
俺の額を汗が流れ落ちる。
ガーエイを相手にしながら、同時にシャグも。
どちらか一体だけでも油断できない相手だ。
ガーエイがつるを振るう。
咄嗟に避けようと横に動くが、手に持っていたクラブにつるが当たり、叩き落とされる。
状況は非常にまずい。それでもやらなければ、やられるだけだ。
覚悟を決めろ。
「ルシュ!」
俺はルシュに呼びかける。
「シャグを頼む、ガーエイは、俺がやる!」




