第91話:仲間たちとの再びの別れ
野営は特にトラブルも無く終わった。
体をゆさゆさと揺さぶられる感覚で目を覚ます。
目を開けた俺の目の前にぼんやりと青色の瞳が映る。
「おはよう」
「……おはよう……」
セリーディの挨拶に俺は返事する。
節々が痛む体を起こす。土の上の寝心地はあまり良くなかった。
見渡すとみんな既に起きているようだった。
軽く全員に挨拶してルシュを見る。
ルシュは少し眠たそうに見える。
「大丈夫か?」
俺の問いかけにルシュは少しあくびをして答える。
「うん……」
疲れが取れていないようだ。それは俺も同じか。
干し肉で朝食を済ませ、俺達は洞窟を抜け出すために出口へと移動を始めた。
……石の大扉に到着した時、セリーディが扉に手をかざす。
それに反応し、大扉がゆっくりと閉じる。
「他の冒険者や、盗賊が入ってしまったら困るからね、この扉があったのは逆に都合が良かったよ」
アロンが話す。
確かにそうだ。
魔力を持つ者にしか開けられない扉というのは、後日の本格調査まで洞窟を守る事にもなる。
帰り道にも魔獣やゴーレムが出てくる可能性は当然あるため、行きと同じように隊列を組み、警戒しながら進む。
***
帰り道は特に何と出くわす事も無く順調に進んだ。
そのまま洞窟を抜け、外に出る。
「無事に脱出だな」
エルカンがまぶしそうに空を眺めて話す。アロンやセリーディの顔に安堵が出る。
俺もこれまでの疲れがどっと出てきて、思わず荷物を下ろしたくなってくる。
外の光と空気がこんなに心地よく感じられるとは思わなかった。
「さあ、街道まで頑張っていこうか」
アロンの言葉に俺達はゆっくりと歩き出し街道を目指した。
***
草地を進み、街道へと出た。
人や馬車が往復する事で均された道に、懐かしさすら覚える。
ここでアロン達とは別れる事になった。
俺とルシュは北のマーテンへ、アロン達は南のアドザへ向かうためだ。
「俺達とアドザに来てもいいんだぜ?」
エルカンが提案してくれる。
「今回は結構くたくたになったからね、少し休養を取りたいと思ってるよ」
俺はもちろんそうだが、ルシュが既に疲れてしまっているので、十分な準備をしない遠征はまだ早いと感じる。
「急な誘いだったからね、次はしっかり準備出来てる時に声を掛けるようにするよ」
アロンの言葉に俺とルシュは頷く。
「ヨウヘイ、ルシュ、楽しかったよ、ありがとう」
セリーディが俺達の前に来て手を差し出す。
俺とルシュはセリーディと握手する。彼女は満足そうに頷いた。
昨日ルシュに庇ってもらった事を、彼女なりの形で伝えているのかもしれない。
「そうそう、今回の報酬だけど……」
そういいながらアロンが俺に小金貨を2枚手渡す。
「200ラント……!いいのか?」
俺は思ったより大きな額に驚いた。
今回の探索はルシュの活躍はあったものの、アロン達だけでも十分こなせるレベルのものだと思ったからだ。
ルシュも目を丸くして見ている。
「もちろん、依頼主を満足させられる結果だと思うから。
まだ報酬は決定してないけど、これくらいは渡せるよ」
「皆異論無いよね?」
アロンはエルカン達を見渡して尋ねる。
エルカン、セリーディ、セドはすぐに頷く。
「ま、そういう事だから。依頼の報告はオイラ達がアドザで行うよ」
「今回もありがとう」
「楽しかった」
俺達の言葉にアロンが笑う。
「君達は良い冒険者になるよ、また一緒に仕事をしよう」
そういって俺達は北へ、アロン達は南へ向かって移動を始めた。
アロンの最後の言葉が、疲れた体に不思議と染み渡った。




