第87話:首無き異形
スケルトンが投擲した剣が弾かれ、地面に落ちる。
衝撃で剣が折れ、ガラガラと音を立てながら地面を転がった。
投擲された剣がセリーディに当たる事はなかった。
「ルシュ……!」
セリーディの声が響く。
ルシュは投擲された剣に背を向け、セリーディに向かって大の字に手を広げてセリーディを庇っていた。
セリーディはいち早くルシュに駆け寄る。
「ルシュ、大丈夫!?」
セリーディの声にルシュは大の字のポーズを解き、返答する。
「うん、大丈夫」
「他のスケルトンは……起き上がってこないみたいだ」
アロンは周囲を警戒していたようだ。一通り周囲の安全を確認し、俺達もルシュの元に集まる。
「二人とも大丈夫かい?」
アロンの問いにルシュとセリーディが頷く。
「ちょっと見せてね……」
セリーディはルシュが剣を受けた首元を見る。
「確かに怪我していないね……」
セリーディはルシュの首元をまじまじと確認してから告げた。
俺はルシュの無事を確認してから、ようやく息をついた。
間に合わなかった、と思った。それなのにルシュは動いていた。
俺が届かなかった場所に、ルシュはいた。
「セリーディ、知らせてくれてありがとう。
そしてセリーディを助けてくれてありがとう、ルシュ」
アロンが二人に礼を言う。
「アロンが無事で良かったよ、
それに危ない所を守ってくれてありがとう、ルシュ」
アロンの言葉にセリーディも返す。礼を言われたルシュは少し照れた様子ではにかむ。
「……にしても、頭を潰しても動くスケルトンがいるなんてなぁ」
エルカンが腕を組み、散らばったスケルトンを眺めながら話す。
「その事だけど……」
エルカンの言葉にセリーディが返答する。
「多分、スケルトンじゃないよ」
セリーディは散らばった骨の傍に歩く。
「うん、やっぱりこの骨の所だけ魔力が濃い……と言っても、もう微量なものになってるけれど」
骨を杖でつつきながらセリーディは話を続ける。
俺達はセリーディの近くに集まる。
骨が動き出す様子はない。
「じゃあ一体こいつらは何なんだ?」
エルカンの問いかけに、セリーディは、んー…と唸る。
「魔法で動く人形……ゴーレムかな……。
動きが鈍かったのは魔力が切れかかってたから、剣を投げてきたのはきっと、魔法を使う私が攻撃の優先対象と命令されてたから」
「ゴーレム……」
俺は呟くように口を開く。漫画やゲームで知っているゴーレムは岩の怪物といったものだった。
骨で出来ているとは思わなかったが、魔法で動く人形という意味では確かにゴーレムと呼べるのだろう。
アロンが骨とゴーレムの装備を注意深く調べながら口を開く。
「パーツもだし、装備もボロボロで風化しかかっている。古い時代のものだね……」
「バラバラにしたのが元に戻らないのはもう復元する魔力が無いからだね。
こんなゴーレムがいるのは私も知らなかった……ゴーレムって石人形で、術者が居ないともっと単純な命令しかこなせないから」
セリーディの言葉にアロンは納得した様子で頷く。
古い時代のゴーレム、しかも魔法使いを優先的に攻撃するという命令が組み込まれていた。
この洞窟を作った者は、敵を想定して守りを固めていたという事だ。
俺達は周囲の安全を再度確認する。
動き出すゴーレムも、魔獣も見当たらない。
セリーディもルシュも周囲にこれ以上の魔力は感じないと言った。
「取り敢えずはこの周囲にはこれ以上は何もいなさそうだね、少し休憩にしよう」
アロンの提案に従い、休憩する事にした。




