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第78話:襲撃の魔獣

 小道の中に広がった空間を眺める。


 広さは20、30メートル程の幅の小さな空間だ。苔の生えた岩、点在する背丈ほどの小さな木が目を引く。地面は少し湿っていて、水気の多い場所である事が伺えた。


 イルミニが前に進み、周囲を見渡す。そして岩の傍まで歩き、そこでしゃがみこんだ。


「暫く採集するから、周囲はお願いね……」


「はい」


 イルミニの言葉に俺は返事し、ルシュが頷く。俺とルシュはイルミニから少し距離を取って待機し、イルミニはしゃがんで花や草、苔等の採集を始めた。


 俺はクラブを木に立てかけ、楽な姿勢を取る。森の中に目を向ける。明るいが木々に阻まれるので見通しはあまり良くない。俺とルシュは周囲を警戒するが、相変わらず森の中は鳥と虫の鳴き声が響くばかりだ。


「………」


 誰も口を開くことはなく、静かに時が過ぎる。


 このまま何も無く終わりそうだな。


 そんな事を考えていると、森の奥からガサガサと音が聞こえた。


 俺はすぐにクラブを持って構える。音はかなりの速度でこちらに向かってきている。


 木の陰から何者かがこちらに飛び掛かってきた。


「くっ!」


 クラブで受け止めようとするが、間に合わず強い衝撃で後ろに吹っ飛ばされる。


「うわっ!」


 強い勢いで地面にぶつかるが、湿った地面だった事が幸いし、草と泥で汚れる程度でそれほどダメージはなかった。


 俺を吹き飛ばした相手を見る。そこには1メートルほどの大きさの二足歩行の怪物がいた。全身濃い緑色の体毛をした毛むくじゃらの生物で、右腕に大きな爪が2つ伸び、熊よりは細く小さい体だ。大きくむき出した瞳と低い鼻が特徴的だ。


「あれは……ベリーム」


 イルミニが呟く。


 ベリームと呼ばれた魔獣は俺には目もくれず、イルミニに向かって走る。


「イルミニさんっ!」


 俺は起き上がるが、ここからでは間に合わない……!


 ベリームがイルミニに向かって飛び掛かろうとした瞬間、重い音と共にベリームが吹き飛んだ。


 イルミニの前に鋼のメイスを持ったルシュが立っている。派手に吹き飛んだベリームは木に叩きつけられ、動き出す様子はない。


 その様子を確認した後、ルシュは俺の方に駆け寄ってくる。


「大丈夫?ヨウヘイ」


「ああ、何ともない」


 起き上がった俺はクラブを拾い上げながら返事する。服から汚れを払い、ルシュを見る。ルシュは何ともなさそうだ。最初に飛び掛かられた俺を咄嗟にフォローしながらイルミニも守る、その判断の速さに改めて驚く。


「ありがとう、ルシュ」


「うん」


 そのやり取りをした所で、イルミニを見る。


「イルミニさん、大丈夫ですか?」


「ええ、あなた達が守ってくれたから、何ともないわ……」


 動じている様子はあまりない。魔法の腕は確かでも、戦闘は苦手だと言っていた。

 それが本当だという事が分かったが、それよりも、あれだけの事があって採集を再開できるこの人の胆力の方が気になった。


「まだ時間かかるから、引き続き宜しく……」

 そう言ってイルミニは何事もなかったかのように岩の傍にしゃがみ込む。


 俺とルシュは顔を見合わせてから、また護衛に戻った。

 護衛が必要な理由が身をもって分かった。

 同時に、この人が何者なのかという疑問が、また少し深まった気がした。


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