第76話:護衛任務
翌日。
俺とルシュはイルミニの魔法店に向かった。店内に入ると、準備を整えた状態でイルミニが座っていた。
「良く来てくれたわね……では行きましょうか……」
***
俺達三人はマーテンの街を南西から出る。マーテンの南西から伸びる道の先に、森が広がっていた。
今回の依頼は、依頼者であるイルミニの護衛だ。
彼女が森で採集を行うので、俺とルシュが安全を確保する。移動中の荷物持ちも行う。
俺達は草原の中にある道を森に向かって歩きながら話をした。
「私たちがこれから向かう森……西の森ともマーテンの森とも呼ばれている場所よ……」
イルミニが森の説明をしてくれる。
「森は危険な場所なんですか?」
「いえ……マーテンに近いし、冒険者が訪れることも多いから……魔獣はいるけれど、そこまで危険ではないわ……」
少し間を置いてからイルミニが続ける。
「私は戦う事は苦手……身を守るくらいの魔法も魔道具もあるけれど、採集に集中したいから……」
「なるほど……」
イルミニさんは魔法が得意なはずだから戦闘もこなせるかと思ったが、そうではなかったようだ。
魔法イコール攻撃する手段と思い込んでいた部分があったからだろうか。魔法にも得手不得手があるという事だ。
「私達が守るから、大丈夫」
ルシュがイルミニに話しかける。その言葉にイルミニが微笑んだ気がした。瞳が見えないのであくまでそんな気がする、だが。
森の入り口に差し掛かる。クステリの森と比べると浅いという印象を受けた。木は低く光が差し込む場所も多い。
道はある程度踏み慣らされており、脇道に逸れない限りは迷う事はなさそうだ。
ここで俺がイルミニの前、ルシュが彼女の後ろに付く形にする。
「森の中は足場が悪いから気をつけてね……採集する場所に向かうわ……」
イルミニが注意を促した所で、ルシュが口を開く。
「イルミニって目隠ししてるけど、見えてるの?」
俺もずっと疑問に思っていたが、何となく尋ねにくかった質問だ。
「見えるわ……私は目があまり良くないから、代わりに魔力を使って見ているの……」
いまいちピンとこないが、魔法の使い方の一つという事だろうか。
目の代わりに魔力で周囲を感知するという事なら、それが先日俺達が近づいた時に何の物音もなく気付いていた理由なのかもしれない。
「そうなんだ……」
声色的にルシュもいまいち理解できていないような気がする。
二人して分かったような分からないような顔をしているのだろう。
「さあここから森に入るわ……しっかり護衛してね」
イルミニの言葉に俺達は頷き、森の中に入っていった。




