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第68話:魔道具屋の店主

 ギルドを出てからモアさんから貰った地図を頼りに俺とルシュは移動する。貴族街を囲む壁の北にその建物があった。


「モアさんが書いてくれた店名はイルミニの魔法店……これは店名……?多分合ってるとは思うけど」


 木造ではあるが古めかしい出で立ちで、周囲は蔦に覆われていて、いかにも魔術師が居るといった風貌をしていた。

 看板は掛かっておらず、杖とスクロールの絵が描かれているだけで店名は記されていない。


「それにしても、雰囲気あるな……」


「そうなの?」


 俺のステレオタイプな怪しい魔術師のイメージはルシュには無かったようだ。


「ヨウヘイ、入ろう」


 何となく入りづらい雰囲気に飲まれて足を止めていた俺をルシュが引っ張って店内に入る。


 ***


 店内に踏み入れると、イメージ通り薄暗くなっていた。奥にあるカウンターにランプが置かれていて、それが最も大きい光源になっている。

 後は店内の所々に小さな灯りが灯っていた。


「こんにちはー……」


 恐る恐る声を掛けて奥に進む。

 カウンターには誰もいない。留守にしているのか。

 取り敢えず店主が戻るまで店内を見てみる事にした。


 入り口から右手にある棚に近づく。小さな灯りの正体が何なのか気になったからだ。棚の近くにある灯りを見てみると、それは小さな石だった。

 石が淡い光を出している。棚にはスクロールやら何か分からない皿のような物等、怪しげな商品が並べられているが、俺の興味は光る石に引き寄せられていた。


 ルシュはカウンター近くにあるガラスの筒の中で水のようなものが上下に揺れている魔道具らしき物を、興味深そうに眺めていた。


 と、そんな様子で店内を見ていると、


「いらっしゃい……」


 カウンターから声が聞こえた。何の物音もなく急に声がしたので、俺は驚いてビクッとしてそちらを見る。

 ルシュも不意打ちだったようで少し驚いていた。

 カウンターの奥に、薄ぼんやりと人影が見える。


 何の気配も物音もしなかった。足音も、息遣いも、何も。

 いつの間にそこにいたのか、全く分からない。

「何かお探し……?」

 そう口にするのは白い長髪に透き通るような白い肌、黒いローブに身を纏った女性だった。

 小さな声だが聴き取る事は出来る。目隠しのような物を付けていて、その瞳は見えない。前は見えているのだろうか。


 ゆらり、と体が揺れる。まるで実体があるのかどうか怪しいような、そんな佇まいだった。


「私達、魔法の事が知りたいの」

 カウンターの前に来ていたルシュが話す。


「ギルドでモアさんからこの店の事を聞いてきたんです、魔法の素質も見てもらえるとか」


 俺の言葉を聞いて女性が少し揺れるように動く。


「そう、モアちゃんから聞いてきたのね……こちらへどうぞ……」


 女性はカウンターの右奥にあるテーブルに俺達を案内した。「モアちゃん」という呼び方からすると、顔見知りらしい。

 この人物が何者なのか、この薄暗い店の中では余計に掴みづらかった。

 俺とルシュは促されるままテーブルにつく。女性はそれを確認してから俺達の向かいに立った。


「貴方たちは魔法の素質、そして魔法の事が知りたい、でいいのかしら……?」


 女性の言葉に俺たちは頷く。


「そう、じゃあ少し待ってて……そうそう、私は店主のイルミニ……」


 目隠しをしているが俺達の動きは見えているようだ。イルミニは奥に行こうとしながら喋っている。

 奇妙なタイミングでの自己紹介だったが、俺達も慌てて名前を告げる。

 イルミニは俺達の名前を聞いてから後ろを振り向き、少しゆらゆらと揺れながら店の奥に消えていった。


 イルミニの後ろ姿を見送った後、俺は何となくルシュを見る。


 そしてルシュの首にかけられた魔道具が目に留まった。


 ハッとする。


 魔法の事を知らないという点では俺もルシュも同じだが、素質となると話は別だ。

 素質とはすなわち魔力の事じゃないのか。ルシュは竜族で強力な魔力を無意識に放っている。

 だからこそメラニーがあの魔道具に魔力を込めて隠したのだ。素質なんて有り余るくらいあるはずで……。


 このままだと、ルシュが竜族であることがバレてしまうんじゃないか……?


 冷や汗が頬を伝う。


 だが今更無しには出来ない。もしバレそうになったら上手く誤魔化すしかないな。


 そんな事を考えて焦っていると、店の奥からイルミニが現れた。その手には水晶が抱えられている。


 イルミニはテーブルに水晶を置き、座る。

 大きさ30センチほどで、加工がされた様には見えないが表面の凹凸が少なく整った形をしていた。

 曇りなき透明の水晶の向こう側がはっきりと映る。


「そうそう、一応お金支払ってね……二人で6ラント……にしようかと思ったけど、モアちゃんの紹介だから2ラントで」


「あ、ハイ……」


 イルミニに料金を支払う。


「では素質から見ましょう……この石に触れてみて……」


「……」


 ルシュの事を考えると、自分の素質を確かめる前から気が重かった。とは言え、ここで悩むのも今更過ぎる。


 俺は水晶に触れた。


 ……


 何も起こらない。


「……珍しい……」


 イルミニが口を開く。


「素質……と言うか魔力が全くないわ……」


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