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第65話:意識しなかった能力の使い方

「くっ!」


 右足を動かそうとするが、糸によって地面に縛り付けられたかのような状態になり、引きはがす事が出来ない。


 魔獣が眼前に迫る。


 そして。


 魔獣の身体が横に数メートル吹き飛ぶ。


 ルシュが持っていた棒で魔獣を殴りつけていた。

 その勢いで魔獣は吹き飛び、ルシュの持っていた棒が折れる。


「ルシュ、助かった!」


 俺の言葉にルシュは頷く。


「武器が……」


 ルシュが呟く。魔獣を殴りつけた時に彼女の持っていた棒は折れてしまっていた。

 ルシュの攻撃で吹き飛びはしたが、あの頑丈で重そうな魔獣を吹き飛ばすだけの力に棒が耐えられなかったのだろう。

 魔獣は体勢を崩しているだけで、まともなダメージを受けていないように見える。


「異様な程頑丈だな、どうしたらいい……?」


 魔獣が体勢を整え、こちらに向きなおす。


 俺は動けない、ルシュは武器がない。あれと戦えるのはルシュだけだ。


 ……そうか!


「ルシュ!」


「何?」


 ルシュは魔獣の様子を伺いながら俺に返事をする。


「こい、棍棒!」


 鋼のメイスを呼び出し、ルシュの足元に投げた。


「これでアイツを倒してくれ!」


 ルシュの目が見開かれる。俺はこれまで呼び出した棍棒を他人に使わせた事はほとんどない。

 単にその必要性がなかったからだが、ルシュもそれを使う発想はなかったようだ。

 棍棒は俺専用のものであるという固定観念は恐ろしい。


 ルシュは鋼のメイスを拾い上げ、魔獣に向かって左に回り込みながら走る。

 力強く地を蹴るその姿に頼もしさを覚えた。


 魔獣はルシュの方向を向き、糸を吐く。

 ルシュは右足を強く踏み込んで跳び、それを回避する。


 着地したルシュはさらに加速し、魔獣に肉薄。

 振りかぶった鋼のメイスを魔獣の頭部に叩き付けた。


 乾いた音が大きく響く。


 俺の力では弾かれてしまった魔獣の堅牢な殻も、ルシュの一撃には耐えられなかったようだ。

 殴られた頭部が大きく窪む。さらにルシュは横から頭部を殴りつけ、もう一つ大きな窪みを作る。

 その時点で既に決着は着いたも同然だった。


 ルシュは何度か魔獣を殴りつけ、魔獣が動かなくなった。


 俺とオークの青年は糸を四苦八苦しながら取り除いた。

 何とか動けるようになったが、べたべたしている…。


「ありがとうございます、もう駄目かと思いました」


 オークの青年が俺達に向かって頭を下げる。


「無事で良かった」


 俺の言葉にルシュも頷く。


 ***


 オークの青年はマーテンに向かう途中だったので、帰路が一緒になった。

 彼と一緒に林道を歩く。


「マーテンに向かっていた途中で、いきなりあの魔獣に襲われてしまって」


 オークの青年はぞっとした表情で話す。


「あなた達が居なければどうなっていたことか、ありがとうございます」


「いや、間に合って良かったよ。でもあんな魔獣がいるなんてなぁ……」


 俺達はガワ討伐の依頼を受けていたので、あの魔獣と戦う予定はなかった。

 想定外の相手だったが、こういう事もあるのが冒険者という仕事なのかもしれない。


「今回も助かったよ、いつもルシュには助けられてるな」


「そんな事ないよ、ヨウヘイの棍棒が無かったら私、素手で戦わなきゃならなかったもの」


 俺の言葉にルシュは少しはにかむ。


 今回、俺は安易に魔獣に攻撃を仕掛けてしまったので、糸を受けて窮地に陥った。

 ルシュが居たから何とかなったものの、俺一人ではどうすることも出来なかっただろう。

 成長したと思った矢先にこれだ。


「これからはもっと慎重に行動しなきゃな……」


 俺は誰に言うでもなく呟いた。


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