第64話:現れる新たな魔獣
不意に聞こえた声にその方向を見る。ルシュもハッとしてそちらを向いていた。
この林道の先から声がする。切羽詰まった声だ。
ゆっくり考えている時間はない。
「ルシュ!」
俺の呼びかけにルシュは間髪入れずに返事をする。
「うん……!」
俺とルシュは荷物を持ち、声のする方向に走った。
***
声のした場所に近づく。
「ヨウヘイ、あれ!」
俺より少し先を走るルシュが俺に話しかける。
そこには尻もちをついているオークの青年と、1メートルはあろうかという緑色の巨大な虫がいた。
虫はオークの青年に向かってじりじりと距離を詰めている。
「化け物め、こっちだ!」
俺は手に持っているメイスを虫に投げつける。メイスは鉄板に当たったようなくぐもった音を出して弾かれる。
虫がこちらを向いた。
複眼となった大きな目が正面に二つ、鋭い顎を持ち、アリと蜘蛛の間のような平べったい胴体をしている。
言うまでもなくこれは魔獣だろう。
「大丈夫か!?」
「ありがとうございます!身動きが取れなくて……」
オークの青年から安堵が感じられる。青年の足には白い糸のようなものが絡みついていた。
虫の注意はこちらに向いている。このまま彼に向けさせないようにする必要がある。
動きはそこまで素早くはなさそうだ。
正面にさえ立たなければ何とかなりそうな気がした。
「俺は右から行く、ルシュは左から回り込んでくれ!」
「うん!」
俺は右側に回り込む。ルシュは言葉通り左側に走る。
魔獣がどちらを追うか、動きが止まった。
「来い!棍棒!」
右手に鋼のメイスを呼び出し、魔獣の頭に叩き付ける。
「んなっ!?」
振り下ろした右腕が大きく弾かれる。
硬いだけでなく弾力もある。
鋼のメイスでも駄目なのか……!
弾かれた勢いでメイスが腕から零れ落ちた。
俺がのけぞっている間に虫の魔獣がこちらを向く。
「っ!」
魔獣の前脚がこちらに伸びるより早く後ろに跳び、距離を取る。
着地でバランスを崩し、膝を付く。
「ヨウヘイ!」
ルシュの声がする。
体勢を立て直そうとすると、魔獣の頭が動いた。
その口が開くと、白い糸が飛んでくる。
右足に絡みつく。
「これは……!」
粘性が強く、地面に足が縛り付けられた状態になった。ガ
ワの時とは明らかに違う。こいつは格が違う魔獣だ。
魔獣がじりじりとこちらに近寄ってきた。




