第63話:魔獣討伐と異変
ガワは俺に向かって走ってくる。
「……来い!」
そのガワに向かってメイスを横振りに振る。ガワは咄嗟に避けようと体を傾けるが、回避が間に合わずメイスをまともに受けた。
柔軟そうに見える体からは想像に合わない硬い感覚が腕を伝う。
「っらぁ!」
声と共にメイスを振り抜くと、ガワはそのまま横に吹き飛ぶ。
「当たった……!」
俊敏な魔獣に自分の動きが付いていけているのかと驚いた。吹き飛んだガワは起き上がるが、明らかに弱っている。
他のガワもこちらに向かって走ってきた。腕の感覚はまだ生々しく残っているが、それに気を取られる訳にはいかない。
「食らえ!」
再び迎撃する形でメイスを横薙ぎに振るう。フシュウゥと唸り声を上げながらガワが横跳びして回避する。
直後、もう一体のガワが飛び掛かろうとしてくるが、ルシュが棒で殴りつけ、後ろに大きく吹き飛ばした。
「助かった!ルシュ!」
「うん」
示し合わせた訳ではないが、ルシュは俺のサポートをしてくれていた。
俺達とガワの間で再びにらみ合いになる。
ガワは弱った個体が1体、無傷の個体が1体、ルシュに吹き飛ばされた個体は起き上がる様子がない。
倒したのだろう。
ガワは逃げるでもなくこちらを観察している。俺も息を整える。
ルシュも落ち着いていた。
ガワが2体とも向かってくる。無傷のガワが左に弧を描きながら走ってくる。
弱っているガワが正面から迫る。
左からくるガワはルシュが迎え撃つべく動くのが見えた。
俺は正面に備える。
ルシュは前に駆け、飛び掛かろうとするガワに先制攻撃する。
棒を縦に振り、ジャンプしようとするガワを上から叩き付けた。
対して俺の正面から来るガワの動きは明らかに鈍い
。最初の一撃でかなりのダメージを与えていたようだ。
足元へ向かってくるガワにメイスを薙ぎ払う。
その一撃をなすすべなく受けたガワは吹き飛んだ。
2体とも動かなくなる。最初にルシュの一撃で吹き飛んだガワも、起き上がる事はなかった。
***
「どうやら倒せたみたいだな」
俺の言葉にルシュが頷く。
「うん、倒せて良かった。討伐完了だね」
「ルシュのお陰だよ、ありがとう」
倒したガワ達を一瞥する。殴りつけた時の感触がまだ腕に残っていた。
魔獣とは言え動物みたいなものだ。
手をかけるのに抵抗が無かったとは言わないが、アステノでの猟やその解体のおかげか、尻込みする事はなかった。
アステノには感謝しかないな。
しかし、ガワか。ラズボードほどの力も体力もなく、グアンプほど群れてもいない。
一度躱されたものの、対応できない速さではなかった。確かにこれが駆け出しの討伐対象と言うのは頷ける。
戦いのド素人だった自分が通用するとまでは思っていなかった。
アステノに来た頃の自分を思い出す。
テオックに連れられて森に入り、ラズボードに追い回されて必死に逃げた。あの時は棍棒を出す事しか出来なかった。
それが今日は、自分の判断で踏み込み、自分の腕でガワを吹き飛ばした。
ひょっとすると俺自身、少しずつ成長しているのかもしれない。
いや、きっとそうだ。アステノに来た頃の自分とは、確かに違う。
……戦いの後始末を行い、マーテンに戻ろうとした所で、
「助けて!!」
と声が聞こえてきた。




