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第62話:凶暴だが凶悪ではない初心者向け依頼

「……この辺りかな?」


 俺とルシュは林道の途中で立ち止まる。近くにはマーテンと周囲の集落への方向を示した立て札がある。


 ここはマーテンから南東に伸びる街道の途中だ。

 マーテンの周囲にはアステノや宿場を除いても複数の小規模な村や集落があり、それらとの交通手段となる街道がある。

 この街道は利用者は少な目だが、重要な交通路である事には違いない。


「ルシュ、油断しないようにな」


「うん」


 俺の言葉にルシュは頷く。


 直後、林道の周囲の草むらから音がする。


「来い!棍棒!」


 俺は鋼のメイスを、ルシュはマーテンで準備した護身用の棒を構えた。音は次第に大きく、そして複数聞こえてくる。


 草むらから黒い影が飛び出す。


「コイツがガワか!」


 小型の黒い猫のようなシルエットをした獣が3体、俺たちの前に飛び出してきた。


 ***


 依頼受領前。


「ガワ……ですか?」


 カウンターの上に置かれた依頼書を見る。確認されたガワは2体、他にもいる可能性あり、追加報酬あり、報酬は20ラント。


「はい、ガワについてはご存じ……ですよね?」


 俺達の様子に気付いたモアさんが質問してくる。先日名前だけは聞いたが、実質知らないのと同じだ。


「いえ、知らないです」


 俺がそう答えると、依頼用紙を覗き込んでいたルシュも頷く。


「そうでしたか、ガワはこんな感じの魔獣です」


 モアさんがもう一枚用紙を見せてくれる。そこには猫のようなシルエットの獣の絵が描かれていた。

 黒く、猫とも言い難い狂暴で鼻の潰れた少し醜悪な顔をしている。体長は小型の動物程度のものらしい。


 情報を読んでいくと、ガワは最もポピュラーな魔獣らしく、

 このデュコウに限らず人族の国レインウィリス等、他の国においても非常に多くの数が生息しているとの事だった。

 単体での戦闘力は低く、駆け出し冒険者の格好の討伐対象との事だ。


「クステリの森では見た事無いね」


 用紙を見ていたルシュが話す。


「ガワは生息範囲は広いですが、天敵が居る場合や、生息に適した環境が近くにあるとそちらに移動しますからね。

 ラズボードはガワよりも強力な魔獣なので、ガワは近寄らないのかも知れません」


 モアさんが補足してくれる。この依頼を勧めてくれたのは、俺達にガワより強力なラズボードとの戦闘経験があったからか。

 あのがむしゃらに立ち回ったあれを戦闘経験と呼べるかどうか怪しいが。


「狂暴ではあるが凶悪ではない、そう言われてる魔獣です。あなた達ならそこまで苦労はしないと思いますよ」


 モアさんが念押しして勧めてくれる。

 俺は戦闘が得意だとは思っていない、むしろド素人だと思っているのだが、

 これまでの経験からするとそうでもないという事だろうか。自分ではよく分からない。


「受けよう、ヨウヘイ。私達なら大丈夫……!」


 俺が考えるより早くルシュが提案する。俺を見つめるルシュの瞳に不安は一切ない。


「うーん、分かった、受けようか」


 俺は覚悟を決める事にした。


 ***


 俺達の前に現れたガワ達はその顔を大きく歪め、俺達を威嚇している。


「3体か、依頼書より多い……!」


 その内の1体が唸り声を上げながら、俺達に向かって飛び掛かってきた。


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