第58話:最初の問題は“泊まる場所”
「そうだったんだねー、二人で旅をすることにしたんだ」
ピウリが果実酒を一口飲む。俺とルシュはピウリの案内でとある酒場に入っていた。
店内にはオークとオーガの客もいるが、ゴブリンの客が10名ほどは居る。
ゴブリンの隠れ家的な店なのだろうか。
「お待たせしました、どうぞ」
オークの店員が料理を運んでくる。
果物のような物の中に豆が詰められた料理と、黄色い野菜の入ったスープが俺たちのテーブルに置かれた。
「まずは食べよっかー」
ピウリの言葉で俺たちは料理に手を付ける。
豆の料理は塩味が少し強いが、豆との相性が良く美味い。
スープは酸味が強くツンとした味で、中に入っている野菜がぷにぷにしていて何とも言えない味と食感だ。
ルシュは空腹だったのか、どちらの料理も夢中で食べていた。
「アタシはここの料理が好きでねー。マーテンの北西にストって言うゴブリンの村があるんだけど、そこの料理がここで食べられるからねー」
客にゴブリンが多いのはそういう事だったのか。
「でも他の種族でも口に合うと思うんだよね」
ピウリのくりくりした瞳を見ると、スープの味がなんとも言えなかったとは言い出せなかった。
「ああ、おいしかったよ、ありがとう」
「うん、凄く美味しかった」
ルシュはお気に召したようだ。
言葉を選んだ俺と純粋に感想を述べたルシュ、違う意味なのに出す言葉が同じであることがすこしおかしく思えた。
「今回はアタシが出しておくよー、連れてきたからねー」
食後の果実酒を飲みながらピウリが話す。
「いや流石にそういう訳にはいかない」
俺がすぐに返すと、ピウリはニッコリと笑い、
「いやー未来のお得意様への先行投資だからねー。
その分うちをごひいきにしてくれたら良いんだよー」
と話す。
「なるほど、そういう事ならごちそうになるよ。ありがとう」
「ありがとう、ピウリ。しょーばいじょうず」
俺に続いてルシュも言う。
これも村長から教わったのだろうか。
「どういたしましてー」
ピウリはニコニコ笑っている。
この人懐っこさには絆される。そしてルシュとピウリの相性も悪くなさそうだった。
「そういえば店は留守にしていて大丈夫なのか?」
「うん、フリドー君が店番してるからねー。もう暫くは大丈夫だよー」
ピウリの言葉にフリドーへの信頼の厚さが伺える。
「話は戻すけど、冒険者になるためにマーテンに来たんだよね?ならギルドに登録も必要だけど、お金はある?
マーテンのギルドは登録料一人50ラントだよー」
50ラント。思ったより高い気がしたが、こんなものなのかもしれない。
「二人で100ラントか、大丈夫だよ」
ピウリは頷き、
「じゃあ次は寝泊まりする場所を決めなきゃいけないねー」
という。以前マーテンに来た時に利用したクルーノなら一泊10ラントで決して高くはないはずだ。
俺はそこを利用するつもりでいた。
「クルーノって宿にしようと思ってるんだ、前にテオックと来た時に泊まってたから」
俺の言葉にピウリが少し考える仕草をする。そして少し間を置いてから口を開く。
「冒険者になっちゃうとあそこでは泊まれないかも知れないねー」
と言った。




