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第51話:見抜かれた真実

 ある晴れた日。


 正午を過ぎた頃、俺は村の果樹園に居た。


 俺はベンチに腰掛け、その隣には村長が座っていた。

 俺とテオックは日頃の仕事で一緒に行動する事が多いが、ルシュが加わった事でルシュを世話している村長と会う機会も増えた。

 今日は果樹園の果物の採取を行い、採り終えたので後はゆっくり過ごすだけだ。


 向こう側ではテオックがルシュと遊んでいる。逃げるルシュをテオックが追いかけているようだ。

 俺ではルシュの足には追いつけないので、テオックくらいでなければルシュの遊び相手は務まらないだろう。


 二人の様子を村長は優しい瞳で見ている。俺もその様子を微笑ましく感じていた。


「ルシュもすっかり馴染みましたね」


 村長が向こうの二人を見ながら話す。


「そうですね、ルシュが良い子で良かった」


 親目線みたいな事を話してしまった。

 最初のルシュは大人しい印象だったが、今こうして見ると中々無邪気な面もある。

 彼女の無垢な所がこうやって村人達に受け入れられたのだろう。


「いや、俺の事も受け入れてくれたからな……それくらいは当然かもしれない」


 向こう側ではテオックが勢い余って転び、ルシュがそれに追いついて背中の上に飛び乗っている。


「あらあら、今日も洗濯物が多くなりそうね」


 少し困った顔をしながら村長が笑う。


 平和だ。


 この世界に来てから、ずっと何かに追われるように過ごしてきた気がする。

 生き延びる事、役に立つ事、この世界に慣れる事。

 それがいつの間にか、こうして隣に誰かが座り、向こうで笑い声が聞こえる、それだけで十分だと思えるようになっていた。


 そう強く感じた。


 最初は自分の事で精一杯だったが、最近は少しだけ周囲を見る余裕が出来てきた。このアステノの村では時間がゆっくり流れている。

 マーテンは賑やかな地方都市といった印象だ。俺はこの世界に来てアステノと、マーテンの一部しか知らない。


 リユードさんが言っていた。

 この世界には俺が知らない物が沢山ある、元いた世界にも無かった物が。


 その言葉が頭の中でゆっくりと広がっていく。


 ……数分、いや十数分だろうか、物思いに耽っていた。


「ヨウヘイ」


 村長に話しかけられる。その声は穏やかで、いつもと変わらない。


 ただ、視線はまだルシュとテオックに向けられたままだった。


「なんですか?」

 メラニーはすぐには答えなかった。


 向こうでルシュの笑い声が上がる。テオックがまた何かやらかしたらしい。


 その光景をしばらく眺めてから、メラニーは静かに口を開いた。


「あなたは、記憶喪失ではありませんね?」


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