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第50話:もう一匹の女王

 羽音のする上方を見上げる。ルシュも同じように上を見ていた。


 そこにはグアンプクイーンの姿があった。


「クイーンがもう一匹!?」


 鋼のメイスを握りなおして構える。ルシュは折れた棍棒を拾い上げた。


 クイーンは俺達と同じくらいの高さに降り、こちらに飛んでくると思った瞬間、力を失ったように地面に落ちた。

 まるで大きな置物が落ちたかのようだ。


 地面に落ちたクイーンは動かない。ルシュも様子を伺っている。

 程なくして気付く。

 地面に落ちたクイーンの表面がキラキラと輝き、冷気を出していた。


「メラニー?」


 ルシュがメラニーの方向を振り返る。

 まさか彼女がやったのか。


「一体だけならば対処は難しくないですからね」


 村長が微笑む。

 またこの人の底が少し見えなくなった気がした。


 ***


「まさかクイーンが2匹いるなんて」


「びっくりした……」


 俺の言葉にルシュが返す。


「グアンプ達の数が多かったから、まさかとは思っていました。巣が二つ近くにあるのでしょう」


 村長は俺とルシュに皮袋の水筒を渡してくれた。

 礼を言って受け取り、水を飲む。

 疲れきった体に水が染み渡っていく感覚がある。


「巣はこのままでも良いんですか?」


「クイーンがいなければ巣は機能しないので、残ったグアンプ達もすぐにいなくなります。戻りましょう」


 メラニーの言葉で俺達は集落への帰路についた。


 ***


 道中はグアンプとの戦いが話題になった。


「初めて魔法を見ました、凄かったです」


 俺はメラニーに話しかける。ルシュも頷いた。

 凄かった、月並みな表現だがこれ以外に言葉が出てこない。

 俺が一匹一匹苦労しながら倒したグアンプを次から次へと氷のつぶてで迎撃し、氷の剣、風の魔法、無数の氷のトゲ、そして最後のクイーンを一撃で仕留めた凍結魔法。

 今思い返しても凄まじかった。


「ふふ、ありがとう。けれどヨウヘイ、ルシュ、二人が居なければもっと苦労していたかも知れないわ」


 メラニーが俺とルシュを労う。ルシュはその言葉に笑顔になり、俺も少し気恥ずかしくなった。


 世辞かもしれない。それでも、その言葉が素直に嬉しかった。


 隣を歩くルシュを横目で見る。

 汚れた服のまま、少し疲れた足取りで、それでも満足そうに歩いている。


 今日一日、ルシュはずっとそういう顔をしていた。

 外出が叶った朝も、精霊の広場でも、戦いの中でも。


 この子がアステノの外に出られて、本当に良かった、と思った。


 やり遂げた満足感が、じわりと胸に広がっていた。


 ***


 この後集落に戻った俺達は、集落の面々から持ちきれないほどの感謝の品を頂き、一泊させてもらった後にアステノへと戻った。


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