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第48話:氷刃と女王蜂

 それから程なくして、森の奥から葉のこすれる音と羽音が入り混じった音が聞こえ始めた。


「ヨウヘイ、ルシュ、注意してください」


 村長の言葉に、俺は鉄のメイスを、ルシュは集落で借りてきた木製の棍棒を構える。


 森の奥から複数の影が見える。見る見る内に距離を詰めてくる。

 現れたグアンプの集団はパッと見ても20匹はいた。


 グアンプ達はすぐに突っ込んでくる事はなく、俺達と一定の距離を保った状態になっている。


「正面は私が引き受けます、ヨウヘイとルシュは回り込んできたグアンプをお願いします」


 俺とルシュは頷く。


 村長が右手を前に出して指差すと、グアンプが地面に落ちた。


「あれは……!?」

 一瞬、何が起きたか分からなかった。


 村長の指先から、白い何かが撃ち出されていた。

 音もなく、しかし確かな速さで。

 正面にいるグアンプ達を次々と貫き、地面に落としていく。


 撃ち出されているのが氷のつぶてだと気付くのにそう時間はかからなかった。

 村長の周囲が急激に冷え、白い冷気が目視できるほどに漂っていたからだ。

 魔法だ。


 テオックや村人から話には聞いていた。

 でも、この世界に来てから実際に目にしたのは初めてだった。


 指先一本から放たれる冷気が、20匹を超える魔獣を次々と仕留めていく。

 その光景は、ゲームや漫画で何度も見たはずの「魔法」とは、全く別物だった。


 もっと静かで、もっと冷徹で、そして圧倒的だった。

 隣を見るとルシュも俺と同じように、呆然と村長を見ていた。


「ルシュ、来るぞ!」


「う、うん!」


 俺の言葉にルシュも我に返り、迎撃体勢を取る。

 村長の背中を俺とルシュの二人で守る形になった。

 右は俺が、左はルシュが受け持ち、背中合わせになる。


 数匹のグアンプが俺の前に現れた。

 一匹がこちらに近づいてきたので踏み込み、鉄のメイスを振りかぶる。


「食らえっ!」


 振り下ろしたメイスがグアンプを捉える。

 硬い感触の後に柔らかいものを押すような何とも言えない感触が腕を伝った。

 そのままグアンプを地面に叩き付ける。倒しきれたか確認する余裕もなく、次のグアンプを確認する。


 もう一匹が近づいてきた。アゴをカチカチと鳴らして威嚇している。

 体勢を立て直し、横薙ぎにメイスを振る。


 ……が、メイスは空を薙ぐ。グアンプが上昇してメイスを躱したのだ。


「くっ!」


 グアンプはそのまま近づいてきて、俺の左腕に噛み付く。


「ぐうっ!」


 アゴが食い込む。メイスを持った右腕をそのまま振り上げ、噛み付いてきたグアンプを殴りつける。

 グアンプは吹き飛び、木の幹にぶつかって落ちる。すかさず近づき思い切り殴りつけてトドメを刺した。


「いってえ……」


 左腕を見ると、アゴは服を貫通した様子はなく、非常に強い力で挟まれた状態になっていたようだ。

 出血はしているかもしれないが、ピウリが魔獣との戦いに耐えうると言っていたのは本当だったようだ。


 まだグアンプはいる。さっきは躱されたが、グアンプの動きはそこまで速くない。

 近づいてきた奴から落ち着いて対処しよう。


 ***


 グアンプは次から次へと来る。


 あの後もグアンプに体当たりされたりしながら、何とか数匹を仕留めた。

 振り回した右腕に疲労を感じる。左腕をはじめ体の節々に痛みがある。

 携帯している傷薬を飲む、これまでも何度もお世話になっている頼れる一品だ。


 ルシュは最初は浮くグアンプに手を焼いていたが、棍棒の届く範囲に入れば確実に仕留め、浮いているグアンプも投石で落としていた。

 高い身体能力が成せる業だろう。


「ルシュ、大丈夫か?」


「うん、まだ大丈夫……」


 肩で息をしている。長期戦は不利か。


 不意に俺の前に一匹グアンプが飛んできたのでメイスを叩き付ける。

 気持ち悪く感じる余裕すらない。


 グアンプを倒してから村長の方向を見ると、村長の魔法を掻い潜った一匹のグアンプがメラニーに向かっていた。


「村長、危ない!」


 ここからでは間に合わない。

 だが、次の瞬間




 メラニーの目の前にまで迫ったグアンプが、真っ二つになって地面に落ちる。


 何が起こったのか分からなかったが、メラニーの腕に青白い剣が握られていた。


「氷……?」


 メラニーは俺に振り返って告げる。


「ありがとうヨウヘイ、私は大丈夫です。後少しなので頑張りましょう」


 振り向いた後ろから迫るグアンプを氷の剣で両断し、前に向きなおす。剣を手放し、再び両腕から魔法を放ち始めた。氷のつぶてでグアンプを迎撃し、風の魔法で吹き飛ばす。

 俺達よりも圧倒的に多くのグアンプを相手にしながら、危なげなく淡々と処理している。疲労している様子すらない。


「おかしいわ、少し数が多いわね。二人とも無理しないでください」


 暫く戦い続け、グアンプの数が目に見えて減ってきた。俺とルシュの周りにはそれぞれ十数匹のグアンプの死骸が、メラニーの前にはおびただしい数が転がっていた。


「流石にそろそろ出てくるでしょう」


 メラニーの言葉に俺とルシュは前方を見た。


 大きな羽音とともに、体長1メートルはあろうひときわ大きなグアンプが姿を見せる。周囲には数匹のグアンプが付き従うように飛んでいた。


「まるで女王蜂だな……」


「クイーン、これを倒せばグアンプの繁殖は止まります。後一息です」


 メラニーの隣に立ち、俺とルシュは武器を握り締めてグアンプクイーンを見据えた。


 グアンプクイーンが取り巻きとともに、俺達に向かって飛んできた。


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