第45話:木々の声
「これは……」
広がった視界を見渡す。
高い木に囲まれた、直径数百メートルはありそうな半球状の空間だ。
全体的に緑がかった印象を受けるが、木の葉の密度がそこまで濃くないのか比較的明るい。
空間の中には幾つかの大木があり、木の幹に入り口のような物が見える。
住居になっているのだろうか。他にも高さ2、3メートルほどの低木がそこかしこに生えていた。
「わぁ……」
ルシュも辺りを見渡し、この空間に差し込む木漏れ日に目を奪われている。
「二人とも、取り敢えず奥に行きましょう」
こうして立ち尽くして見渡すのも恒例になりつつあったが、村長の声で我に返る。
俺達は空間の奥へ進み、少し歩いた所で村長が声を出した。
「こんにちわ」
俺達の周りには誰もいない。
村長は明らかに近くにいる何かに向かって話しかけている。
ルシュを見ると、ルシュは一点を見ていた。
それはこの空間に生えている低木だった。
「こんにちわ、メラニーさんと小さなお客さん達」
低い男性のような、落ち着いた声が聞こえる。
それは目の前の低木から発せられていた。
「えっ、まさかこの木が」
俺の言葉に村長が微笑む。
「ええ、この方はトレントですよ」
よく見ると木に目と口が付いている事に気付く。
彫りが深いが温厚そうな顔だ。
「すみません、この木と言ってしまって」
この世界の基準で失礼かどうかは分からないが、反射的に謝罪してしまった。
「気にする事はない、トレントを見るのが初めてなのだろう」
特に気にしていない様子で返事が来る。
懐が広いのか、それともトレントとはそういう方々なのか。
「用事があると言う事で今回伺いました。長老さんは奥にいらっしゃいますよね?」
村長の言葉にトレントが頷く。
「ありがとうございます」
村長が頭を下げ、俺とルシュも続いて頭を下げた。
俺達は空間の中央にある大木に向かった。




