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第44話:トレントの集落へ

 精霊の広場の中央にある切り株に俺達は腰掛けて休憩する事にした。


 さっきのルシュの言葉からすると、この切り株はただの切り株では無さそうな気がして、腰掛けて良いものか少し悩んだ。

 しかしメラニーが気にせず腰掛けたので、それに続いた。


「さっきお話したけど、この切り株は私がアステノに訪れた時には既にこの状態だったの」


 メラニーが口を開く。


「言い伝えで、昔はここには大木があったそうです。

 精霊の木と呼ばれていて、この広場の名前の元になったみたいね」


「この切り株が精霊の木なんですか?

 大木という程の大きさではない気がしますが」


 俺は率直な疑問を口にする。


 メラニーは少し考える素振りを見せてから答えた。


「どうなのかしら、あくまで言い伝えだから。

 実際に精霊の木があったけれど、何かがあってこの姿になったのかもしれません」


 メラニーは切り株の上に優しく手を置く。


「どちらにしてもこの広場には穏やかで優しい気が満ちていると感じるから、

 きっと今も精霊様が見守ってくれていると私は思います」


 言われてみると確かに、この広場には独特の静けさがある。

 森の中の他の場所とは少し違う空気だ。


 メラニーは、ここまで黙って話を聞いていたルシュに向かって口を開く。


「ルシュが見たのは、ここと良く似た他の精霊の広場ではないかしら。

 またゆっくり思い出していきましょう」


 メラニーの言葉にルシュが頷く。

 その表情は、さっきより少し穏やかになっていた。


 ……こうして10分ほど休憩した後、メラニーが立ち上がった。


「それではそろそろ行きましょうか。あちらから小道に出て進みましょう」


 メラニーの指差した先に、うっすら小道が伸びているのが分かる。

 俺達が採集の時に通る道に比べるとかなり細い道で、言われなければ気付かなかったかもしれない。


 ***


 小道に入り、暫く歩き続けた。


 歩くにつれ、少しずつ周辺の木が高くなってくる。

 クステリの森は広大で、場所によって様々な顔を見せる。

 アステノから街道沿いは木々が比較的低く、陽の光も多く明るい。

 大樹の水場は魔素によって青みがかり、木々が鬱蒼と茂っている。

 ここで暮らし始めてから暫く経つが、今でも地理に詳しい人物が一緒にいなければ、俺だけでは遭難してしまうだろう。


 歩きながら、ふと思った疑問をメラニーに尋ねてみる。


「そう言えば、集落に住んでいるのはアステノと同じように魔族なんですか?」


 同じ魔族ならわざわざアステノから外れた場所に住まなくてもと思ったのだ。


「そうね、魔族の方も住んでるけれど、その集落にいるのはトレントの方々よ」


「トレント?」


 俺とルシュが同時に声を上げる。


「そうです、木霊と言われる方々で、魔族とは少し違います。そろそろ見えてきますよ」


 メラニーの言葉の後、俺達の目の前に高い木に囲まれた空間が広がった。


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