第43話:見覚えのある場所
俺はメラニーとルシュと一緒に村から出て道を進んだ。
クレウィの入った麻袋は俺とルシュが一袋ずつ持ち、村長の後ろから着いていく形になっている。
ルシュが袋を二つ持てると言ったが、それでは俺の立つ瀬が無いので一つ持つ事にした。
メラニーは魔道具を手編みの袋に入れ、ルシュはそれを首にかけている。
これで集落の人達を驚かせる心配はないらしいが、俺にはルシュがこれを着けていても何かが変わったようには感じられなかった。
きっと俺には魔力を感じる才能は無いのだろう。
実際、魔力そのものも無さそうだが。
などと考えていると、ルシュが口を開く。
「メラニー、集落はどれくらい遠くにあるの?」
「それほど遠くはないわ。村よりは少し木が多いけれど、木漏れ日が心地良い素敵な所よ」
メラニーの言葉にルシュがへぇ~と少し嬉しそうに返事をする。
村を出てからルシュはずっと上機嫌だ。無理だと思っていた外出が叶ったのがとても嬉しかったのだろう。
その表情を見ていると、俺の表情も自然と綻んでくる。
穏やかな空気のまま道を進み続けると、開けた場所に出た。
森に囲まれた広場で、中央に切り株がある。
「ここは、精霊の広場ですよね?」
俺の言葉にメラニーが頷く。
「ええ、この広場から南東に出て進んだ所にあります。ヨウヘイ、ルシュ、疲れていませんか?ここで少し休憩していきましょうか」
「そうですね……、ルシュは……」
ルシュを見ると、広場中央の切り株をじっと見つめているのに気付いた。
「ルシュ?」
俺とメラニーがルシュの様子を見ていると、ルシュがぼそっと呟く。
「ここ、切り株じゃないし、もっと大きな木があったと思う」
その言葉に、思わず切り株を見た。
どこからどう見ても、ただの古い切り株だ。
この広場に来るのは以前に一度あったが、切り株はその時からここにあった。
だがルシュの目は切り株から離れない。
何かを確かめるように、あるいは何かを思い出そうとするように、じっと見つめ続けている。
村長は少し黙ってからルシュに話しかける。
「この広場の木はずっと昔から切り株のままだと聞いているわ。ルシュはこの場所に見覚えがあるの?」
メラニーの言葉にルシュは目線を動かさず、少し俯いてから答える。
「分からない……見た事ある気がした」
その一言が、ひどく小さく聞こえた。
記憶がないはずのルシュが、この場所に何かを感じ取っている。
それがどういう意味を持つのか、俺には分からない。
ただ、ルシュの横顔に浮かんだ、戸惑いとも悲しみとも取れる表情が、胸の奥に引っかかった。
ルシュの様子を見た村長が、ルシュの顔を覗き込んで話しかける。
「無理に思い出そうとしなくていいのよ。少しだけここで休憩してから集落に向かいましょう」
「うん、ありがとう」




