第42話:ルシュへのちょっとした贈り物
メラニーはそのまま家の中にとどまり、俺とルシュは連れ立って外へと出た。
「そう時間は取らせない」という言葉を信じつつも、具体的にどれほどかかるかは見当もつかない。
俺たちはひとまず、村道の傍らに据えられた休憩用のベンチに腰を下ろした。
つい先ほどまで喜びを見せていたルシュだったが、今はまた翳りのある不安げな表情に戻っている。
本当に事態が好転するのか、拭いきれない懐疑心が彼女の心を支配しているのかもしれない。
「ルシュ、村の生活にはもう慣れたか?」
沈黙に耐えかね、俺はあえて穏やかな声で問いかけた。
「えっ……うん。みんな優しいし、メラニーのお陰で、少しずつお話もできるようになったから」
「そうか。なら良かった」
ルシュは俺の瞳を見つめて口を開く。
「……私の様子を、気にしてくれたんだよね。ありがとう、ヨウヘイ」
気を紛らわせようと話題を振った意図を、彼女は見透かしていたようだ。
思惑を悟られた気恥ずかしさから、俺は誤魔化すように頭を掻いた。
「そんなつもりは無かったんだけどな」
……それから十分ほど、二人で他愛のない話を続けていた時だった。
ルシュがハッとした様子で、弾かれたように村長の家へと視線を向けた。
直後、メラニーの家の扉が開かれ、メラニーが顔を出す。
「終わりましたよ。中に入ってください」
誘われるまま家の中へ戻ると、テーブルの上にはあのプレートが静かに置かれていた。
一見しただけでは変化がないように思えたが、目を凝らせば、中央に埋め込まれた石が淡い薄紫色を帯びて変質している。
あの濁った欠けた石が、何かを宿したように見えた。
「ルシュ、これを持ってみて」
メラニーはルシュに優しく語りかける。
「うん」
促されるままルシュがプレートを手に取る。
メラニーは少し距離を取り、値踏みするようにじっと見つめた。
すでに魔道具の効果は発現しているのだろうか。
俺の五感では、空気の変化ひとつ感じ取る事はできない。
魔力というものを俺は知覚できないのだと、改めて思い知らされる。
だが俺の困惑をよそに、村長は確信に満ちた笑みを浮かべた。
「どうやら成功したみたい。……さあ、出発の準備をしましょうか」




