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第40話:一緒に行きたいのに

 ルシュがアステノに訪れてから、既に一ヶ月が経とうとしていた。

 そんなある日。


「ヨウヘイ、少しお願いがあるのですが」


 朝食を済ませ、ルシュを迎えに行ったところで

 村長であるメラニーに声を掛けられる。


「ええ、今日は特に予定も無いですし、俺に出来る事なら」


 俺の言葉にメラニーは微笑んだ。

「私に付き合って欲しいの」


 ぎょっとする。唐突にそんな事を言われるとは思わ……

「長ければ明日までになるのだけど、近くの集落まで一緒に来て欲しくて。

 少し雑用になってしまうのだけれど……」


「ああ、ですよね……」


「……?どうかしましたか?」


「いえ、何でもないです!明日も特には予定が無いので大丈夫ですよ!」


 俺の言葉にメラニーは少し安心した顔をする。


「ふふ、良かった、一人では少し苦労しそうでしたから。共同倉庫にある干し果物を持って行くつもりだったの」


「ああ、クレウィですか、どれくらいの量になりますか?」


 クレウィとは村で栽培されている白い皮に白い果肉を持った果物だ。生で食べるとかなり味が薄くみずみずしい食感だが、乾燥させて干し果物にする事で甘みが強くなる。


「麻袋二つ程ね、一人でも持っていけるのだけど、少し多くて」


 困ったように笑うメラニー。


「それくらいなら俺に任せてください」


 普段からお世話になっているので少しでも恩返しはしておきたい。

 メラニーに良い顔をしたい訳ではないが。


 そこで少し気になる点があった。


 メラニーの家の奥に居て俯いているルシュの姿だ。

 特に俺達の会話に入ってくる事もなく、座っている様子が見える。


「村長、ルシュは……?」


 俺の言葉にメラニーはルシュの方を見て話す。


「ええ、この子も連れていってあげたいのだけれど……」


 少し間を置いてから続ける。


「あの子は竜族だから、何もしていなくても強い魔力を周囲に放っているの。

 村の中では問題ないけれど、今日向かう集落には魔力に敏感な方もいて、ルシュを連れて行くと竜族である事にも気付かれてしまうでしょうし…。

 あの子の魔力で驚かせてしまうから」


 メラニーは申し訳なさそうな顔をしている。


「ルシュは今ではもう私達の言葉もかなり話せるし、可哀想だけどお留守番を……」


 そこでメラニーが言い澱んで、少し考える。


 ルシュが魔族の言葉を習得した速度は確かに驚異的だった。

 初めは俺を挟まなければほとんど会話が出来なかったのに、この短い間でいつの間にか俺がいなくても日常会話は問題なく出来るようになっている。

 俺自身にそれを正確に判別する力はないが、それは間違いないと思う。


「いえ、ルシュはヨウヘイ、あなたに心を開いているし、貴方がいればルシュも寂しい思いもさせずに済むし、私一人で行った方が良いかも知れないわね」


 そこで黙っていたルシュが口を開いた。


「私は……メラニーにダメって言われてる事が嫌なの……」


 力の無い声だったが、はっきりと聞き取れた。


 メラニーの言う事は分かる。

 でもルシュにとっては、事情があると分かっていても置いていかれる事自体が悲しいのだろう。


 ルシュの言葉を聞いてメラニーも困った様子だ。


「ごめんなさい、ルシュ……せめて魔力を隠せるような魔道具があれば良いのだけど、この家にはそういう物はないし、せめて何か魔力を込められるものがあれば……」


 魔力を隠せるような物もこの世界にはあるのか。

 でも魔道具はマーテンならまだしも、どこにでもあるものじゃない……


 いや……もしかして。


「村長、ちょっと待っててください」


 メラニーとルシュが俺を見る。


 その視線を背に、俺は急いで寝床にしているテオックの家の倉庫へ向かった。


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