第38話:空から帰ってきた日
陽が傾き始めた頃、アステノでは村人達が帰路に付く中、ラピドとアルデリンの姿があった。
「助かったよラピド、僕だけじゃちょっと重くてさ」
「別にどうってことはない、テオックとヨウヘイが戻って来たら飲むぞ」
「ああ、うん、そうだ……ね?」
空を見ているアルデリンの様子を不審に思い、ラピドが尋ねる。
「どうした?何か見えるのか?」
ラピドもアルデリンの見ていた方向を眺め、それに気づく。
「おい、なんだありゃ!?」
空に見えるのは西日を背にした大きな黒い影。大きなその影は次第に村へと近づいてきている。他の村人達も次々に気付き、村が騒然とし始めた。
そして遂に村の上空に差し掛かり、そこで移動をやめた。
巨大な影の正体は、白い角と青白い肌をした竜だった。
「おーい!」
竜から声がした。村人達に向かって呼びかけている。
竜は少しずつ地面に降りてきている。その背に二つの人影が見えた。
「テオック!ヨウヘイ!」
アルデリンが声を上げる。
「じゃあもしかしてこの竜は、ルシュか?」
竜の姿に圧倒されながらも、ラピドが呟く。
陽平とテオックは竜の背中に乗っており、竜の腕にはラズボードが掴まれていた。
***
竜の背から陽平とテオックが降りる。
直後に竜が光に包まれ、薄緑の髪色の少女の姿になった。
「ありがとう、ルシュ」
俺がルシュに声を掛けると、ルシュは少し笑って頷く。
ラピドとアルデリンをはじめ、遠巻きに見ていた村人達が近づいてきた。
「何事かと思ったよ、びっくりした~」
アルデリンが心底ホッとした様子で言う。
「なんだよ、お前らルシュが竜の姿してる時を見てるんだから、そこまで驚く事ないだろ。
俺達は初めてだから滅茶苦茶驚いたけどな」
テオックの冗談めかした言い方に対して、
「まさか竜の姿で帰って来るとは思わねえよ、違う竜かもしれないしな」
ラピドが笑いながら答える。確かにそれはそうだ。
安心した村人達の注意が、ルシュが掴んでいたラズボードに向く。
「それにしても、このラズボード大物だねえ」
村の調合屋のゴブリン、ミックが感心しながら言う。
「凄いだろ、ルシュがやってくれたんだぜ」
自分の事のように誇らしげにテオックが語る。
「今日はこのラズボードで宴だ!」
テオックの言葉に周囲が沸いた。
これは俺達三人が帰ってくる間に決めた事だった。
功労者であるルシュが何よりもそれを希望していた、結晶を見つけた時と同じ、あの満足そうな顔で。
俺達がラズボードを見ながら会話していると、後ろから声を掛けられる。
「お帰りなさい、ルシュ、ヨウヘイ、テオック」
振り返るとメラニーがいた。この騒ぎで広場に出てきていたようだ。
「村長、ほらこれ凄いでしょ!」
「ただいま戻りました、村長」
「メラニー、ただいま」
ルシュはすっかりメラニーと打ち解けている。メラニーはルシュの頭を撫でながら告げた。
「それでは宴の準備をしましょうか」




