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第28話:翻訳される世界

「えっ?」


 テオックの口から出た言葉の意味を、一瞬、咀嚼することができなかった。


「なんて言った、って……どういうことだよ」


 困惑のあまり、無意識のうちに少し棘を含んだ言い方になってしまう。


「いやいやお前、言葉通りだよ。なんて言ったのか、さっぱり分からなかったんだよ」


 テオックの顔を凝視する。その真意を読み取ろうとした。

 まさか、悪意があってとぼけているのか……?


 いや、テオックに限ってそんなことはありえない。

 彼はそういう男ではないし、何よりそのアホ面、心底理解できていない者のそれだった。


「お前は、その子と話ができるのか?」


 テオックが探るように俺へ尋ねる。


「そりゃ、もちろん……」


 言いかけて、ルシュの顔を見た。

 彼女は今にも泣き出しそうな、ひどく不安げな表情で立ち尽くしていた。


 ……もしかして。


 俺はルシュを見つめ、テオックを指差しながら問いかける。


「ルシュ、こいつの言っていることは分かるか?」


 ルシュは、力なく首を横に振った。


 衝撃が走る。

 まさか、二人の言葉を同時に理解できているのは、この場に俺一人だけなのか。


「魔族と竜族って、使う言語が違うのか?」


 テオックに尋ねると、彼は困ったように肩をすくめた。


「さあな、俺はそういう学問には詳しくない。

 ただ、魔族と人族は少なくとも同じ言葉を使っている。

 ヨウヘイ、今お前が俺に話してる言葉は間違いなく『魔族の言葉』だ。

 俺は、魔族や人族が竜族と会話をしたなんて話は聞いたことがないし、そもそも別の言語なんじゃないか」


 テオックが少しの間を置いてから、核心を突くように俺に問いかけてきた。


「……どうしてお前はその子と話ができるんだ?」


「どうしてって……」


 あまりに自然に会話を成立させていたせいで、言語の壁など考えもしなかった。


 テオックと初めて出会った時のことを思い出す。

 あの時、俺は彼の言葉を疑いもなく「日本語」として認識していた。

 ピウリの店で見た商品名、マーテンの街に溢れていた看板の文字。

 それらは平仮名でも漢字でもなかったはずなのに、俺は淀みなく読むことができた。

 あれらすべてが「魔族や人族の言語」だったのだ。


 そして今、ルシュが紡いでいるのは、間違いなく「竜族の言語」。


 なぜ俺には、そのどちらもが理解でき、話すことができるのか。

 理由は分からない。この世界に転移したことで自然と身についたものなのか?


 理由はどうあれ、今の俺にできることは一つだ。


「どうしたヨウヘイ? 黙り込んで」


「テオック。なぜかは分からないが、俺にはこの子の言葉が分かるんだ。

 だから、俺がテオックとルシュ、二人の通訳をする」


「「通訳?」」


 意味を問い返す二人の声が、重なった。


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