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第13話:街の謎と、再会

 店を出て歩きがてらにテオックが提案した。

「もう良い時間だし、飯にしようぜ」


 露店の立ち並ぶ道を進み、そこから路地に入る。曲がる直前に、視界の端に城壁のような構造物が映った。


「あの壁は何なんだ?」


「マーテンの中央部分を取り囲むように壁が覆ってるんだよ」


「中に何かあるのか?」


「中は普通の住宅地だよ、貴族や金持ちが多いと思うけど」


「どうしてあんな大層な壁があるんだ?」


「さあ?気にした事無いからなあ」

 テオックはマーテンの住人ではないから知らないのも無理はないか。いつか理由が分かるかもしれない。


 路地を少し進むと、看板が置かれた建物が見えた。


「ここだ、ここで昼飯にしようぜ」


 看板には【サンフィン】と書いてある。香ばしい匂いのする店内に俺とテオックは入った。


 ***


 路地の中にある店だが、太陽の光が程よく入る設計になっていて、思いのほか明るかった。明るめの木材を使った内装はシンプルで、色合いのおかげか居心地が良い。テーブルが6つあり、二組の客がいた。


「いらっしゃいませ!」


 元気の良い声が飛んでくる。白い体毛に覆われたコボルトの店員だ。声からすると女の子のようだ。


「お二人様ですね、ご案内します!」


 手際よくテーブルに案内され、水とスプーンとフォークが置かれる。


「メニューは何になさいますか?」


「ランチ二つ頼むよ」


「かしこまりました!」


 店員が厨房へ引っ込んでいくのを見ながら、出された水を口に含む。香草で風味を付けた水だ。


「あの娘が可愛くてな~、マーテンに来たらとりあえずここに来るんだよ」

 唐突にテオックが言う。


 だからこの店に来たのか。残念ながら俺の目にはコボルトなので犬の顔にしか見えないのだが、テオックにとっては違うらしい。種族によって美的感覚も異なるのかもしれない。


 しばらくしてランチが運ばれてきた。


「おまたせしました!ランチになります!」


 木製の皿が二枚。一枚は鶏肉のようなものを焼いてソースをかけ、野菜で彩りを添えたもの。もう一枚は薄く緑色のスープで、煮詰めて柔らかくなった野菜が入っている。


 スープから口をつけてみる。野菜そのものの甘みが良く出ていて、薄味のデメリットをほとんど感じない。肉料理も、油に味付けをしたようなソースが肉そのものの味とよく合っている。


「美味いな……」


 自然と口から出た。アステノでは野趣溢れる料理が多かった。ここまできちんと調理された料理は、村長の家で出してもらったもの以来だ。


 食べ終えて会計を済ませ、店を出る。ランチは一人5ラントだった。あのクオリティでこの値段なら十分すぎる。テオックはあの店員に会えた事に満足しているようだったが。


「じゃあこの後は夕方まで町を散策するか、色々回ってみようぜ」


 テオックに従って歩き出した。


 ***


 市場とは逆方向の道を進むと、路地から開けた大通りに出た。市場よりもはるかに広い道だ。幅は20メートルほどもあり、まっすぐ伸びている。露店は少なく、道の中央を馬車や馬が往来していた。


「この通りは大通りか?広いな……」


「ああ、町のど真ん中を通ってるんだよ。東西と、後は南に通じてる」


 壁の方向へも伸びていて、壁の内側にも通じているようだ。


 大通りを歩きながら、目に付いた店を冷やかして回った。武具屋ではゲームで見たような武器が並んでいて、試しに素振りをさせてもらったりもした。


 鉄製の剣、長さ2メートル近い槍、鋼製の大振りの斧。いずれも重くて、これを振り回して戦うのは俺には無理だと分かった。精々ナイフかショートソードくらいしか扱えそうにない。鎧を着込むのも同様だ。重量のある装備はオーガやミノタウルスのような力のある種族でなければ扱いが難しいらしい。


 そんなこんなで4軒ほど回ってから、とある店に入った。


「いらっしゃいませー」


 聞き覚えのある声がした。声の主はゴブリンの女の子だった。


「あれ、ピウリじゃないか」


「そうだよー」


「何も言わずに入って反応が見たかったけど、そこまで驚かなかったな」

 テオックが少し残念そうに言う。


「フリドーはどうしてるんだ?」


「フリドー君は今仕入れに行ってもらってるよ、夕方には帰ってくるかなー」


 テオックとピウリが話をしている間、俺は店内を眺めた。正に雑貨屋といった感じで、何でも揃っている。意外に店内は広く、商品がジャンル別に棚に並んでいて雑多な印象はあまりない。中央のテーブルには食品も並んでいる。


「メラニーさんからその服プレゼントされたんだねー」

 不意にピウリに話しかけられた。そういえばこの服を着てからピウリに会うのは初めてだった。


「村長も全く人が悪いよ」

 実際は俺が村長に礼を言う立場だったのだから、あれには少し面食らった。


「でも良く似合ってるよー、いっぱしの冒険者みたいだねー。どう?ここで売ってる武器持って冒険者やってみたら?」


「さっき別の店でちょっと持ってみたけど、俺には扱える気がしないよ」


「そっかー残念。武器買う時は他所じゃなくてうちにしてくれたら安くしてあげるよー」


 水と小さな焼き菓子を買って、しばらくピウリと談笑した。日が暮れかかる頃に俺とテオックは店を後にし、宿に戻った。


 マーテンでの一日目が終わった。


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