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112/120

第112話:ルシュ、がんばる!!!!!!

 どれだけ走っただろうか。視界の向こう側に荒涼とした荒れ地が見える。

 私はゆっくりとペースを落とし、その場にあった木の下で歩みを止めた。


「ハァ……ハァ……」

 かなりの距離を走ったので、流石に疲れている。少し遅れてからチティルが飛んでくる。


「は、速いねルシュちゃん……。ちょっと驚いちゃったよ……」

 チティルにも疲れが見える。彼女は私の隣に立つ。


 私は木を背にして座る。


「ハァ……ハァ……ありがとう、でも疲れた……」

 荷物袋を隣に置き、チティルに話しかける。


「アタシも疲れちゃったよー」

 チティルは立ったままだ。

 ハーピィは立っている方が楽なようだ。


「でも、もうツィエンの丘のそばに来たよね……?」

 私の問いかけにチティルは頷く。


「そうだね。この荒れ地を進むとツィエンの丘があるよ。

 その袋、もしかして街で買ってたのはこの時の為かな?」

 チティルの言葉に私は黙って頷き、荷物袋を開ける。

 中から取り出したのはマーテンの北西に来るまでの間に購入した携帯食のリュク。

 これを最初食べた時、ヨウヘイは「パン」みたいだと言っていた。

 野菜や肉を挟みこんだ物もあり、それは「ハンバーガー」や「サンドイッチ」みたいだとも言っていた。


 私が買ったのは具材を挟みこんだリュクを6つ。軽く食べるには少し多い量。

 崩れないように大葉で包み込んでいるリュクを一つ取り出し、かぶりつく。

 生地のほのかな甘みと、挟まれた野菜のシャキシャキした食感が口の中を支配する。


「んー、美味しそうだね。アタシも軽く食べよっかな」

 チティルはそう言って翼で器用に自身の腰にある袋を持ち上げ、袋の口からふわりと浮いた木の実を自身の口に運ぶ。

 風の魔法を使っているようだ。


「魔法ってそうやって使う事も出来るんだね」

 戦ったり探索するためだけに使う訳じゃないんだ。

 確か以前に街の街灯を点ける依頼もあったから、生活に根付く魔法もあるんだと改めて思った。


「そうだね。アタシたちハーピィは魔法を使って細かい事をするの」

 木の実を美味しそうに食べながらチティルが話す。


 私は水を飲み、二つ目のリュクを平らげる。


 ……


 以前のマーテン南の森で危険な状況になった事をヨウヘイと話し合っていた。


(ルシュは、俺から見たら十分に強いよ、俺なんかよりずっと。でも、欠点は疲れやすい事だと思う。スタミナが足りない)


(だから、スタミナ不足を補うためには……)


 ……


 だから、今日は買い物をする時間をとった。

 三つ目のリュクにかぶりつく。

 これには肉が入っていて、生地の甘みと具の塩気が上手く調和していて美味しい。


 三つ食べ終わり、息を吐く。

 座って落ち着いていると、少しずつ息が戻ってきた。


「驚いたよ、ルシュちゃんがあんなに速く走れるなんて。

 アタシの知ってる誰よりも速いかも知れないね」


 チティルが荒れ地の方角を見ながら話しかけてくる。


「平原だから、思いっきり走れたの。

 私、強いから……サキスの種だってきっと大丈夫、持って帰れる」

 竜族である事は明かさない、でも私が強い事くらい言っても大丈夫なはず。


「そうだね、シャグを倒してたんだもんね。

 出来ちゃうかも。……もう少し休憩したらツィエンの丘に行こうか」

 チティルの言葉に私は頷いた。ヨウヘイが部屋で待っている。

 早く帰りたい。

 でもここで無理をしたら意味がない…もう少しだけ、休んでいこう。


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