第112話:ルシュ、がんばる!!!!!!
どれだけ走っただろうか。視界の向こう側に荒涼とした荒れ地が見える。
私はゆっくりとペースを落とし、その場にあった木の下で歩みを止めた。
「ハァ……ハァ……」
かなりの距離を走ったので、流石に疲れている。少し遅れてからチティルが飛んでくる。
「は、速いねルシュちゃん……。ちょっと驚いちゃったよ……」
チティルにも疲れが見える。彼女は私の隣に立つ。
私は木を背にして座る。
「ハァ……ハァ……ありがとう、でも疲れた……」
荷物袋を隣に置き、チティルに話しかける。
「アタシも疲れちゃったよー」
チティルは立ったままだ。
ハーピィは立っている方が楽なようだ。
「でも、もうツィエンの丘のそばに来たよね……?」
私の問いかけにチティルは頷く。
「そうだね。この荒れ地を進むとツィエンの丘があるよ。
その袋、もしかして街で買ってたのはこの時の為かな?」
チティルの言葉に私は黙って頷き、荷物袋を開ける。
中から取り出したのはマーテンの北西に来るまでの間に購入した携帯食のリュク。
これを最初食べた時、ヨウヘイは「パン」みたいだと言っていた。
野菜や肉を挟みこんだ物もあり、それは「ハンバーガー」や「サンドイッチ」みたいだとも言っていた。
私が買ったのは具材を挟みこんだリュクを6つ。軽く食べるには少し多い量。
崩れないように大葉で包み込んでいるリュクを一つ取り出し、かぶりつく。
生地のほのかな甘みと、挟まれた野菜のシャキシャキした食感が口の中を支配する。
「んー、美味しそうだね。アタシも軽く食べよっかな」
チティルはそう言って翼で器用に自身の腰にある袋を持ち上げ、袋の口からふわりと浮いた木の実を自身の口に運ぶ。
風の魔法を使っているようだ。
「魔法ってそうやって使う事も出来るんだね」
戦ったり探索するためだけに使う訳じゃないんだ。
確か以前に街の街灯を点ける依頼もあったから、生活に根付く魔法もあるんだと改めて思った。
「そうだね。アタシたちハーピィは魔法を使って細かい事をするの」
木の実を美味しそうに食べながらチティルが話す。
私は水を飲み、二つ目のリュクを平らげる。
……
以前のマーテン南の森で危険な状況になった事をヨウヘイと話し合っていた。
(ルシュは、俺から見たら十分に強いよ、俺なんかよりずっと。でも、欠点は疲れやすい事だと思う。スタミナが足りない)
(だから、スタミナ不足を補うためには……)
……
だから、今日は買い物をする時間をとった。
三つ目のリュクにかぶりつく。
これには肉が入っていて、生地の甘みと具の塩気が上手く調和していて美味しい。
三つ食べ終わり、息を吐く。
座って落ち着いていると、少しずつ息が戻ってきた。
「驚いたよ、ルシュちゃんがあんなに速く走れるなんて。
アタシの知ってる誰よりも速いかも知れないね」
チティルが荒れ地の方角を見ながら話しかけてくる。
「平原だから、思いっきり走れたの。
私、強いから……サキスの種だってきっと大丈夫、持って帰れる」
竜族である事は明かさない、でも私が強い事くらい言っても大丈夫なはず。
「そうだね、シャグを倒してたんだもんね。
出来ちゃうかも。……もう少し休憩したらツィエンの丘に行こうか」
チティルの言葉に私は頷いた。ヨウヘイが部屋で待っている。
早く帰りたい。
でもここで無理をしたら意味がない…もう少しだけ、休んでいこう。




