第110話:ルシュ、がんばる!!!!
店内に明かりは無く、天井から柔らかく光がさして店内を薄く照らし出していた。
私は店内を見渡す。最初はあまり良く見えなかったが、目が慣れてきて徐々に店内の様子が分かってきた。
店内にも蔦で覆われた部分があり、それが目を引く。自分と同じくらいの背の比較的低めの棚がびっしりと並んでいる。
棚にはそれぞれ薬が並び、品ぞろえはそれなりに豊富なように思える。
普通の薬屋とは違う雰囲気だけど、だからこそ他の店に無いものがあるかも知れない。
私とチティルはまっすぐにカウンターへと向かった。
「おやおや、お客さんかね」
カウンターの奥から声がしてから、影が出てくる。
薄暗く照らし出されたその姿は、私よりも小さなコボルトの老婆だった。
「お客さんが来るとは珍しいねえ」
コボルトの老婆がふぇっふぇと笑いながら口を開く。
この人物が店主なのだろう。
「お店やっててその言葉で良いのかな……?」
チティルが少し呆れた様子で口を開く。
私はカウンター越しに店主を見て言った。
「テール熱の薬を探してるの、薬がないなら材料のサキスの種と、リチーの粉末が欲しいの」
私の言葉を聞いて、店主が隣にある棚を調べ始める。
「テール熱の薬か材料ねえ……扱ってた事もあったんだけど……」
扱ってた事があったなら、あるかも知れない……!
私は少しだけ期待を抱く。
店主はしばらく棚を調べ、カウンターに戻る。
「薬は無かったねえ……、リチーの粉末ならあるよ」
「おお、やったね!」
私とチティルは目を合わせて喜ぶ。
材料が全部揃った訳じゃないけど、これで後は一つだけ。
「サキスの種は、今は切らしてるのぉ……すまないねぇ」
店主の言葉にチティルが反応する。
「ねえおばあちゃん、サキスの種ってこの辺りに採れる場所はある?」
チティルの言葉に店主は後ろにある本棚から一冊本を取ってきて開く。
そして種の絵が描かれているページを開いた。
「人族の薬用の素材だからこの辺りじゃあまり情報が無くてねぇ……
マーテン付近だと……北西にあるツィエンの丘で採取できるみたいだねえ……」
採れる場所があるんだ……!希望が湧いてきた。
対照的にチティルが翼を自分の顔に当てて少し困った表情をする。
「ツィエンの丘かあ……あそこ結構ヤバい魔獣いるんだよねえ……」
「もし行くのなら気を付けてお行きよ」
……
リチーの粉末を購入して薬屋から出てきた。
「ルシュちゃん、どうする?見込みはあんまりないけど雑貨屋含めて探してみる?」
チティルが私に話しかけてくる。
私は次はどうするか決めていた。
「私、ツィエンの丘に行く!」
危険な魔獣がいると言われた。
でも今日一日走り回って分かった事がある。
街の中を探してもサキスの種は手に入らない。
それなら、自分で採りに行くしかない。ヨウヘイが待っている。




