第109話:ルシュ、がんばる!!!
チティルと別れ、まだ巡っていない薬屋へ移動する。
残りの2店舗の内の遠い方にはチティルが向かってくれるので、私は近い店舗を目指す。
あまり通り慣れない道に入ると迷ってしまう可能性もあるので、一度大通りに出る。
次の店舗は更に西にある。ピウリは曲がり角に目印になる建物を描いてくれているので、間違えないように注意して見ていく。
「ここだ……」
目印になる武具屋を右に曲がり、小道に入る。少し進むと小さな看板の薬屋が視界に入ってきた。
「材料、あるかな……?」
期待と不安が入り交ざる。ここで見つからなければチティル頼みとなる。
……
「……」
この店にも無かった。チティルはここに向かうと言っていた、彼女が来るのをここで待とう。
……
上空から影がよぎる。
「おまたせ、ルシュちゃん」
チティルがゆっくりと下降し、着地する。
「薬の材料、あった?」
これが一番気になる点だ、前置きせずに尋ねる。
私の質問に、チティルは申し訳なさそうに表情を曇らせる。
「ごめんねぇ、アタシの行った店にも無かったよ」
結局見つからなかった。力が抜けて肩を落とす。
「でも、ルシュちゃんが行ってない薬屋、一つだけ心当たりがあるよ。
もちろん薬の材料が見つかるかどうかは分からないけど」
チティルの思わぬ言葉。落としていた視線が上がり、チティルを捉える。
彼女は私の視線をまっすぐ見据えてから笑う。
「思い出したんだよね。ちょっと場所が良くないけど、折角だからね。
ここからそこまで遠くないから、一緒に行こうか」
一緒に、という言葉が嬉しかった。私は頷く。
***
私とチティルは街の中を南西に移動していた。
建物の様相が変わり、古びた建物や所々廃墟のようになっている建物も見受けられる。
徐々に道に物が増え、ヨウヘイと一緒に来た事があるスラムに入っていた。
あの時はヨウヘイが一緒だったけど……。
「こんな所にある薬屋だし、品ぞろえはあんまりよくないかなあと思ってたけど、普通の薬屋とは扱ってる物が違うかも知れないからね」
チティルはスラムでも特に警戒する様子もなく進む。
周辺の住民はこちらを気にしているようだが、明確に何かをする様子はない。
「チティルさんじゃないですか」
唐突に声を掛けられた。声を掛けてきたのは道端で座っていたオーク。
顔つきが厳ついと言えばいいのだろうか、目つきが鋭い。
「やあやあ、こんにちわ」
チティルは特に物怖じすることもなく挨拶する。
「今日はレゾルさんとムーグさんは?」
「いないよ、今日はこの娘とデートだからっ」
チティルの言葉を聞いて、オークが私の方を見る。
「そうですか、チティルさんなら大丈夫だと思いますが、最近この辺りでスリや強盗するような連中がいるみたいで…
ボスも頭を悩ませてました。お気をつけて」
オークの親切な忠告にチティルは翼を振って応える。
「おぉ、そうだったんだね、ありがとう」
チティルの言葉にオークは頷く。
オークは私の方にもちらっと視線を向けたが、すぐに視線を他所に移した。あまり興味がないのだと感じた。
レゾル達はこのスラムにも顔が利くのか。
チティルがここでも物怖じしない理由が少し分かった気がした。
また歩き出し、数分経ったときにチティルが口を開く。
「そろそろ薬屋だよ、あると良いんだけどねー」
その言葉の後に曲がり角を曲がると、木造で所々が蔦に覆われた、周囲と比較しても異様とも取れる建物が目の前に現れた。
「ここだよ、じゃあ入ろうか」
チティルの言葉に頷き、建物の扉を開いた。
どうか、ここにありますように。




