第108話:ルシュ、がんばる!!
「チティル……」
「元気無さそうだね、大丈夫?」
チティルがぴょんぴょん跳ねながら近付いてきた。
翼を伸ばして顔の側面に当ててくる。
「ちょっと疲れてるみたいだし、何があったかお姉さんに話してみよっか。その辺りのお店で」
……
「どうぞー」
オークの店員が二つカップを持ってきてテーブルの上に置く。
チティルのカップにはストローが入れられる。
「なるほどねー」
チティルが納得した様子で頷く。
落ち着いているチティルと対照的に、焦りが強くなってくる。
「うん、だから私、急がないと……」
そう切り出す。急いで次の薬屋に行かないと。
「まあまあ、少しだけゆっくりしていこ?走り回って疲れてるでしょ、休憩もしないとダメ」
チティルの瞳は優しい。
「新人クン……、ヨウヘイクンもルシュちゃんが疲れてへとへとになっても喜ばないと思うよ」
今までのおちゃらけた感じのイメージとは異なり、優しく諭すような言い方。
この感覚、メラニーを思い出す。そう言われてしまっては、納得するしかない。
「さ、飲んで飲んで、アタシのおごりだから」
チティルが微笑んでストローに口を付ける。
「うん」
カップに口を付ける。中に入ったフルーツティーの爽やかな甘みが口の中に広がる。疲れた体に染み渡る。
「美味しい……」
爽やかな風味で落ち着きが戻ってきた。走り続けていた間は気付かなかったけど、かなり疲れていたんだと思う。
「美味しいねー、アタシこのお店初めてだったんだけど、当たりだね」
チティルが嬉しそうに返事する。
……
少しだけゆっくりしたことで、疲れが取れてきたと思う。とは言っても材料の事が頭から抜けた訳ではない。
「チティル、わたし、その……」
そろそろ行かないと、あまりゆっくりはできない。
「ん、確かにそろそろ行かなきゃいけないね」
チティルが立ち上がる。
「ちょっと待っててね」
そう言ってチティルが会計をしに行く。
……会計から戻ってきたチティルが開口一番に、
「残りは2店舗なんでしょ、手分けしよっか」
と言った。
「……いいの?」
突然の提案に驚く。
「もちろん、アタシは飛べるから遠い方行ってくるね。もう一つの店舗宜しくね、待ってくれてたらそこに向かうから」
自分が助けてもらった事を、当たり前のように申し出るチティルの姿が、この人らしいと思った。
森の中で背中に乗せてくれた時も、そうだった。見返りを求めるでもなく、ただ自然にそうする人だ。
こういう人に出会えた事が、少しだけ嬉しかった。
「うん、ありがとう、チティル!」
チティルは頷き、高く浮かび上がる。疲れも取れてきた、行かなきゃ……!




