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第14話 パスワード

「冗談ですよ、圭一君。この銃はね、玩具なんです。ちなみに本物はこれ」

 Jは後ろの腰あたりから本物の銃を取り出し圭一に見せた。

「一体何がしたかったんだ?」

「まぁー試験ですね」

「試験?」

「ちょっとした度胸試しですね。私はね、そんなに馬鹿じゃないんですよ。掌を返したように我々の仲間になってもらえるとは当然思ってもないですよ。想像するに阿久教授でも助けに来たのでしょうか? まぁーその勇気は買いますよ」

 Jに完全に気づかれている。

「我々の仲間になるって言うことはそういう事なんですよ。甘くはないですよ。ここに来て後悔しました? 安心してください。パスワードで結構です。それを教えて頂ければ解放しますよ」

「FAPIGシステムに進入してどうしたいんだ?」

「前にも言いましたがそれは言えませんね」

 ICARCにあるFAPIGシステムは通信データ量を監視するためのシステム。外部からのアクセスは、アクセス権とパスワードがあれば可能。このシステムに進入したからと言って特に何ができるということはない。世界中のデータ通信のデータ量くらいしか分からない。

 また、システムの変更は不可能。それは圭一が勤務するICARC内でしかできないためだ。

 だとすると……。

「単にデータ量が知りたいだけか?」

「さぁーどうでしょうね」

「目的を教えてくれたらパスワードを教えてやってもいい」

「おやおや、私と取り引きですか。ならパスワードを先に教えてくれますか? そうしたら目的をお教えしましょう」

「信用できない」

「安心してください。私は約束を守りますよ。目的と解放。パスワードだけでそれらが叶います。取引としては十分な値打ちでしょう」

 データ量が分かったところで何もシステムに悪影響は与えない。パスワードだけで解放されるならばいい話かも知れない。ただ、用済みという事で殺されたりはしないだろうか。いや、彼は鳥羽を殺さなかった。むしろ、教えなかったらずっとこのままかも知れない。教えなかった方が最終的に殺されるかも知れない。パスワードよりも命の方が大切だ。灰原、鳥羽、松田を守らなければならない。彼を信じるしかない。

「わ、分かった。教える」

「素晴らしい。素晴らしい判断ですよ」

 Jの手下が圭一に紙切れとペンを渡した。

 圭一はパスワードを書き、その紙をJに手渡した。その時、ふと灰原の顔が視界に入った。それはなんというか悔しそうに見えた。


「ありがとう、圭一君。では、約束通りまず目的をお話ししましょう」

 Jはサングラスを外した。冷たい視線と目が合う。圭一は唾を飲み込んだ。

「目的はね、そんなに難しい事じゃないんですよ。過去のデータ量の数値が欲しいんですよ。それが分かればね、過去に現れた生命体が生息する異世界の扉を開けるのに必要なデータ量がわかるでしょ。データ量が分ければ自由に異世界の扉を開けることができる」

「目的の異世界の扉を開けるってそんなことが……できるわけ……」

「それができるんですよ」

「データ量が分かってもそれに対応した異世界の扉が開くのは確率の問題じゃ……」

「本来なら確率ですね。つまり開くかどうかは運次第。でもね、我々はそれを自由に開けるシステムを開発したんですね。あとは実証だけ」

「そ、そんな……阿久教授をさらったのもそれが目的か」

「ビンゴですね。まぁー正確には協力していただいた、ですけどね」

「異世界の物質を売り捌くというのか?」

「まぁーそれもありますが、それより反物質ですよ。好きなところに反物質の世界を誕生させることができたらどうなると思います?」

「ば、爆発」

「お見事ですね。核なんて比じゃありませんよ。そんなことができたら皆が私のいうことを聞くでしょう。ありがとう、圭一君。君のおかげで私の願いが叶いそうですよ」

「そんな欲のために……」

「まぁーなんとでも言ってください。最後の約束を果たしましょう。解放しますよ。お好きな所にでも行ってください。どこに行っても同じですねどね。地球はね、もう私のものなんです」

 Jは圭一に微笑んだ。

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