95話 目の前に居る人は?
朝が少し早くて眠いこの頃。
いつもより電車が混むなぁ(*´-`)座れない。
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逃亡を諦めた魔族のエルビは、倒れた椅子に再び深く腰掛ける。
「レブルもエストも剣は下げていいよ。」
「ええ。」
「でも大丈夫かしら?剣を下げたら逃げたりしない?」
「追撃可能な位置にいれば問題ないでしょう。」
「安心しろ。この状況で逃げは愚策だ。死期をただ早めるだけだ。」
僕らの行動に逃げる意思はないと再度言葉にするエルビ。そんな中1人の人間が歩きテーブルに着く。
「キャリパー!?逃げないとは言っても危ない。相手は魔族なんだから。」
「問題ないとシノブ様も言っていますし。」
「そこまで信頼されても困るけど。」
「それにこの距離であれば、シノブ様なら対応可能でしょう?」
「まぁこのテーブル大きいしね。」
キャリパーさんが座っているのは、よく貴族が晩餐とかするにある長い机のエルビと1番離れている所。
「くく。改めて思うが、肝の座ったものだ。」
「あの人の娘だから。早速だけどいくつか聞きたい事があるわ。」
「何でも答えよう。その分我も長く生を楽しめる。」
「生を?もしかして殺されるとか思っているの?」
「違うのか?我は魔族であるぞ?」
「…………。」
沈黙が部屋を包み込み、何とも言えない緊張感がある。
「ハーネス。」
「はい。なんでしょうか?」
「目の前に居るのは誰かしら?」
「キャリパーの父君で国王様です。」
「んあ!ハーネ……」
勇者の口を塞ぐハーネス。
「シノブ様は誰だと思いますか?」
「エストのお父さんなんでしょう?ねぇエスト?」
「そうね。」
「ふはは。そうだよな。確かに俺の親父で国王だわ。」
モゴモゴ言う勇者を尻目に、全員が口を揃える。
「そう言う事で、この話はおしまい!」
「じゃ、帰ろうか。」
「そうね。このままここに居てもしょうがないし。」
「じゃ、私も……」
「エストレアは少しくらいここでゆっくりして行きなさい。私もしばらくは王都に居るんだから。」
「いや、でも……部屋もないし。」
そろりそろりと出口にすり寄るエスト。
「ここを何処だと思っているの?部屋はあるわよねお父様?」
「あ、あぁ。部屋はそのままにして、掃除も済ましてある。」
「じゃ、それで。シノブ様達も……」
「いえ!結構です。僕とレブルは行かなきゃいけないところがあるので。」
「そうね。そろそろ行かないと大変な事になるしね。」
「そういう訳だから。アイさん繋いでくれる?」
『畏まりました…………セローとハイヤーに繋げてあります。』
ん、相変わらずの優秀な人だ。さてと、少し時間あったしもしかしたら終わっているかもしれないけど……
♦︎
ふむ。備あればとは思っていましたが、予想していたものと違いましたね。
『あーあー。ハイヤー聞こえる?』
「どうかしましたかシノブさん?」
『魔族の件なんだけど。』
「セローさんのおかげで、王都に近づく前に大体の魔族は……」
「師匠の声がする〜」
『あ〜もう今更だけど攻撃中止できる?』
―バシャァ!
空から降って来ていた水の塊が、空中で突然弾けた。
「師匠止めたよ〜」
「……今ので大半の魔族が吹き飛びました。」
『……。』
シノブさんが無言です。何か不味かったでしょうか?
『過ぎた事はしょうがない!僕とレブルはもうすぐで帰るから。2人もラストラの家に帰ってて。』
「分かった〜師匠早く帰って来てね。」
『それじゃ。そう言う訳でよろしく……』
シノブさんの気配がなくなりました。
「そう言う訳で。皆様、解散です。」
「いやいや、どう言う訳だよ!」
「シノブさんから撤退命指示です。なので解散です。」
「そんな事すれば王都に魔族が来ちまうだろう!?」
「理由は……そう言えば聞いてませんね。」
「頼むぜハイヤーさん。」
声的に切羽詰まったり、焦った声ではなかったので。どうにかしてくれたんだと思います。まぁ恐らくですが。
「師匠が帰っていいよって言ってるんだし。行こうよハイヤー。」
「もう少しだけ待って下さいセローさん。こちらから攻撃はせず、少しだけ様子を見て見ましょう。それでいいでしょうか?ヴァイツァーさん。」
「面倒をかけてすまない。では……城壁前にて整列!」
ヴァイツァーさんが兵士をまとめて前線から下がり始める。
「私達も下がるとしますか。」
「は〜い。」
くるっと回れ右をして、王都へトコトコ歩くセローさん。こんな可愛らしい人が、この状況を……
改めて戦場を振り返る。平面だった地面に小さな隕石がたくさん落ちたような跡。末恐ろしい子ですね。
♦︎
連絡したタイミングが良過ぎたな。さてと後は一応話しておくか。
「国王様。仲間の攻撃は中止させました。」
「!?そうか…………あぁ、追って連絡する。」
「何か問題でも?」
「いや。特に問題はない。感謝する。」
「仲間のお父さんですし。」
「お父さんか……」
目を瞑り上を向きその後大きな息を吐く。
「色々と大丈夫かしら?さっきの話の続きなんですけど。」
「あぁ。すまないな、続けてくれ。」
「結論から言うわ。このまま国王の代理やらない?」
「それで良いのか?本当の……」
「っし。これ以上はここで話すのはやめましょう。せっかくのお茶の時間ですし。」
主導権は完全にキャリパーさんに言っている。一緒にいたはずのお兄さんはすでに空気である。
「そろそろ僕とレブルは帰りますね。」
「私もコイツ連れて下がりますね。」
「待てハーネス!このままキャリパーを置いてはいけん!」
「丸腰の貴方より、エストレアさんがいる方が安全だわ。」
「がふっ!?」
地味にダメージを負う勇者。どんまい!
「後は家族の話よ。何かあれば呼ばれるから。」
「剣を持って扉の前にいる。何かあれば呼んでくれキャリパー。」
「ありがとうココロ。」
「あぁでは……ん?今、名前で?」
「はい、行くわよ〜」
この流れに乗って、僕とレブルは後を着いて行く。悲しそうな目をしてエストが見て来る。自分の家なのに何がそんな悲しい目をするのか。
―バタン。
「んー少しピリッとしたわね。私は疲れたから先に帰っているわね。」
「俺は武器を持ってくる!」
勇者はそう言うと、一目散に走り去っていった。
「あの子は挨拶も出来ないのかしら?」
「はは。別に構いませんよ。早く剣を手にして、ここを守りたいって伝わって来ましたし。」
「貴方は本当に出来た人よね。」
「そんな事はないですよ。仲間が、支えてくれる人がいるからです。」
「はぁ〜羨ましい。それじゃ私は2人の邪魔をしないように帰りますね。」
レブルに手を振り歩き去るハーネス。2人ってキャリパーさんと勇者か?でも中にはエストとお兄さんと国王も居るはずだけど。
「どうかした?」
「な、何でもないわ。」
心なしか顔が少し赤い?テラスを出た所も日は当たるし暑いかな?それなら早く行こうかな。
ここは確か魔法制限ないけど、突然いなくなってもあれだし、ちゃんと門から出るか。
「僕達も行こうか。」
「ええ。」
何かを忘れている気がするけど……すぐに出てこないし、まぁいいか。
忍「少し王都を歩いて帰る?」
レブル「え?」
忍「暑いのかなって。時間はあるしどこかでお茶とか飲んで帰ろうかと。別にこのままお城を出た後に転移で帰っても……」
レブル「街に行きましょう!」
忍「あ、うん。」
レブル「忍さん早く行きましょう。」
忍「ここはお城だから走っちゃいけないよ。」
レブル「そ、そうでした。」
忍「なんか学校の廊下みたいだ。」
レブル「ん?」
忍「いや、なんでもないよ。行こうか。」




