小森さん家の末っ子 4
俺の学園生活は相変わらずである。クラスメイトたちは俺と仲よくしてくれていて、沢山の生徒たちが俺に声をかけてくれて、それでいて兄ちゃんたちと楽しく過ごしていて、霧人さんとも相変わらず仲良くしている。
それにしても俺にも親衛隊っていうファンクラブが出来たらしい。過激なところも多いって祐樹が言ってたけれど、俺の所は「莉兎様は皆の弟!」みたいな感じらしい。なんで? ってなるね。
俺の同級生もそういう心情でそういうのに入っているらしく不思議だよな。
そういえば、高等部と中等部は離れているのだけど、高等部に通っている秋充兄と伸樹兄とも入学してからあった。というか、二人とも高等部で人気らしい。うちの兄ちゃんたち、人気者すぎでは?? ってなる。卒業済みの三笠兄だけ学園にいないので、寂しがっているらしく連絡が来た。
しかし三笠兄はこの同性愛だらけの学園を卒業しているわけだが、普通に結婚している。兄ちゃんたち曰く、この学園に通っている内は周りに引きずられて同性と恋愛している人も卒業後は異性と結婚する事が多いらしい。まぁ、学生時代の恋人とずっと一緒にいるのはまずないもんな。
俺も誰かとそういう関係になったりするのかな? と思うけれど正直わかんね。俺、まだ中学一年生だし。
兄ちゃんたちにもそのあたりのことを聞いてみたけどはぐらかされたんだよなぁ。俺にはまだはやいって! 何だか子供扱いされている気分になった。兄ちゃんたちは、やっぱり大人なんだなって思った。
「うーん。俺もそのうちそういう恋とかするのかなぁ」
「莉兎、何を呟いているんだ? 好きな相手でも出来たのか?」
「いや、ないない。俺、そういうのまだ分かんないし」
祐樹に言われた言葉に、俺はそう答える。
それにしても好きな相手とかって、正直ぶっちゃけ分からない。俺は今のところ、そういうのなくても楽しいし。
「じゃあ何でそんなの呟いていたんだ?」
「そういう話を兄ちゃんたちとしたから。祐樹はそういう相手いるの?」
「いや、俺もいないけど。そういう恋愛関係が多いのは高等部からだろう」
「……今仲良くしている人たちもギスギスするなら嫌だなぁ」
恋愛するのは全然いいと思うのだけど、誰かを好きになったりするのは自然の摂理だろうし。でも今、目の前で仲よさそうにしているクラスメイトたちがギスギスしたら嫌だなって思った。
それに対して祐樹は笑った。
「莉兎が莉兎のままでいて、周りと接しているなら問題ないだろう」
「えー。そう?」
「うん。それで莉兎が好きな相手が出来たら皆全力で応援しそうだよな。莉兎ってそういう雰囲気というか、そういうのがあるから。だから莉兎は何も気にせずにそのままでいればいいと思うけど。俺も莉兎の結婚式とか招待されたいなぁ。同性とそういう仲になるなら別かもだけど」
どれだけ先のことを言っているんだろう?? って思ってしまうけれど、祐樹は少なくとも社会人になって、俺が大人になっても仲よくしてくれるらしい。
小学生の友達とかも含めると、俺って友達多い方だと思う。結婚式とかするならいっぱい呼びたいなー。まぁ、将来のことなんて全く分からないけど!
「でも俺も結婚できるかわからなくない?」
「いや、莉兎は結婚は絶対すると思うけど。莉兎と一緒に居たいって、莉兎のことを恋愛的な意味で好きだって相手絶対いると思うし」
何故だか祐樹にそんな風に決めつけられた。
うーん、まぁ、そういう相手がいたら嬉しいな。
「というか、結婚しなかったとしても莉兎は友人に囲まれてそうだよな。一人にはならなさそう」
「一人とか寂しいじゃん! 無理!」
想像しただけでも寂しい。一人で過ごすとか俺には無理だな。一人だと寂しくなってすぐに誰かに連絡しちゃうと思う。
「ははっ、莉兎ってその名前の通りというか、兎みたいに寂しがり屋だよな」
何だかそんな風に笑われてしまった。
祐樹とそんな会話を交わした数日後に、霧人さんにも会った。
霧人さんにも同じような話をしたら、「その通りだな」って笑われた。そして頭を撫でられた。
「莉兎は一人にはならないさ。寂しくなったら連絡してくれれば俺もかけつける」
「本当ですか? 寂しかったら俺、霧人さんに連絡しますねー。まぁ、俺が寂しがる前に兄ちゃんたちが俺の周りにはいますけど。でも大人になったら兄弟関係も希薄になるんですかね?」
「いや、莉兎は何歳になってもきっと末っ子として可愛がられると思うぞ」
何で祐樹も霧人さんもそんな風に断言できるんだろう。俺よりもずっと俺のことを理解している感があるなぁ。
「そうだといいなぁ」
兄ちゃんたちが結婚しても恋人が出来ても、大人になっても兄弟仲良く過ごせればいいな。ちょっとブラコンで俺のことを優先しすぎるのは正直言って「えぇ?」ってなるけど俺は兄ちゃんたちの事が何だかんだ好きだから。
でも兄ちゃんたちがいなくて寂しくなったら霧人さんのことを呼ぼうかなってそう思った。
――小森さん家の末っ子 4