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転生したら太子だったんだが、なぜか後宮が私と息子の禁忌の恋に沸き立っている  作者: zhaozhao


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第52話 陛下の料理の腕前

あの黒焦げ寸前の角煮は、結局どうにか完成した。


見た目は最悪。

味も……なんとか食べられる程度。


小満はひと口かじると、顔をしかめながら飲み込んだ。


それでも親指を立てる。


「お父さん。御膳房には全然かなわないけど、ぼくは好き!」


陛下は嬉しそうに笑い、小満の頭を優しく撫でた。


私も一切れ箸でつまんで口へ運ぶ。


もぐもぐと噛んでから、一言。


「塩、入れすぎ。」


「次は減らす。」


「……まだ次があるの?」


「ある。」


彼は真っ直ぐ私を見つめた。


「君を追いかけるのはもう終わりかもしれない。でも、その先には一生がある。」


「一生って長いだろ?」


「だから、ゆっくり覚えていけばいい。」


私は何も返さず、ご飯を口へ運んだ。


けれど――


口元は自然と緩んでいた。


小満は私と彼を交互に見つめると、急に茶碗を置いて立ち上がる。


「ぼく、お腹いっぱい! 皇祖母さまのところ行ってくる!」


「靴を履いてから!」


「はーい!」


ぱたぱたと走っていく小満。


その後ろを、茶トラ猫も尻尾を立てて追いかけていった。


厨房に残ったのは、私たち二人と、焦げ色の角煮だけ。


陛下は手を伸ばし、私の口元についていた米粒を指先で取る。


「笑った?」


「笑ってない。」


「じゃあ、その口元は?」


「引きつってるだけ。」


彼はくすっと笑うと、そのまま身を寄せ――


私の口元へ、そっとキスを落とした。


「これで?」


「まだ引きつってる?」


耳まで一気に熱くなる。


私は慌てて彼を押し返した。


「……もう! 鍋がまだ洗ってないでしょ!」


「御膳房に任せればいい。」


「さっき追い返したのは誰?」


私は彼の口調を真似して言う。


「『朕のことに手を出すな』って。」


「……」


彼は二秒ほど黙り込み、観念したように袖をまくった。


「……分かった。俺が洗う。」


私は戸口にもたれながら、大きな鉄鍋を前に途方に暮れる彼の背中を眺めていた。


外では雪が止み、柔らかな陽射しが差し込んでいる。


すすで少し汚れた彼の横顔を、光が優しく照らしていた。


前世では――


この人が厨房に立つことなんて、一度もなかった。


でも今世では。


私を追いかけるために、料理まで覚えようとしている。


私は静かに歩み寄り、その背中へ腕を回した。


彼の身体が一瞬だけぴくりと震え、


すぐに力が抜ける。


そして大きな手が、私の手の甲をそっと包み込んだ。


「どうした?」


「別に。」


私は小さく笑う。


「ただ、このどうしようもない世界も――」


「もう少し居てもいいかなって思っただけ。」


彼も笑う。


くるりと私を抱き寄せ、額をそっと重ねた。


「もう少しじゃない。」


「一年だ。」


「システムも言ってただろ?」


「一年、生き抜くんだって。」


「……そのあと、どうするの?」


彼は少しだけ考えてから答えた。


「家へ帰る。」


「あるいは――帰らない。」


「決めるのは君だ。」


私は彼の瞳に映る、自分の姿を見つめた。


十八歳の皇太子。


その身体の中には、三十歳の私がいる。


「帰ろう。」


私は微笑む。


「でもその一年で、ちゃんと角煮を作れるようになってね。」


「約束する。」


「あともう一つ。」


「淑妃に恋愛小説を書かせないで。」


「この前の『龍陽東宮秘録』は、本当に勘弁して。」


彼は吹き出した。


「……努力する。」


「努力じゃなくて、絶対。」


「はいはい。」


「絶対に。」


彼は苦笑しながら何度も頷く。


「分かった。」


「絶対だ。」


そう言うと、


彼はゆっくり顔を寄せ――


今度は、私の唇へ優しく口づけた。


鍋の中の油はすっかり冷え、


白く固まり始めている。


外では雪解け水が軒先からぽたぽたと落ち、


冬の日差しが静かに庭を照らしていた。


――こんな毎日も。


案外、悪くないのかもしれない。

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