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転生したら太子だったんだが、なぜか後宮が私と息子の禁忌の恋に沸き立っている  作者: zhaozhao


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第44話 ――陛下は……もう戻ってこない

小満が東宮へ連れて来られた時、まだ口には食べかけの砂糖餅をくわえていた。


「ママ、どうしたの?」


「何でもないわ。」


私は小満を抱き上げ、その小さな身体をぎゅっと抱きしめる。


「今夜はママと一緒に寝ようね。」


「じゃあ、パパは?」


「パパは戦ってるの。」


「勝った?」


「……もうすぐよ。」


小満は首をかしげ、そっと私の頬に触れた。


「ママ、泣いてる?」


私は思わず自分の顔を触る。


頬は涙でびしょ濡れだった。


「違うよ。汗。」


「そっか。」


彼女――いや、小満は私の肩に顔を預け、小さな手でぽんぽんと背中を叩く。


「大丈夫、大丈夫。パパは一番強いもん。前にボクがおねしょしても、全然怒らなかったし。」


思わず吹き出した。


なのに涙は止まらなかった。


……なんだよ、その例え。


東宮は夜通し明かりが灯されていた。


私は宮女も宦官もすべて外へ下がらせ、屋敷の中には影七と数名の隠密だけを残す。


賢妃も帰らなかった。


部屋の隅に座り、小さな短剣をぎゅっと握り締めている。


「それ、使えるの?」


「使えません。」


彼女はあっさり認めた。


「でも……脅しくらいにはなるでしょう?」


思わず苦笑した。


夜も更け、三更。


外から足音が聞こえてきた。


……影七じゃない。


あいつは足音なんて立てない。


私は皇帝が出征前に渡してくれた剣を握り締めた。


「いざという時は身を守れ。」


そう言って渡された剣。


三か月練習した結果、覚えた技は一つだけ。


――刺す。


それだけ。


ギィ……


扉がゆっくり開く。


入ってきたのは福海だった。


その背後には禁軍がずらりと並んでいる。


「殿下。」


福海はいつものように穏やかな笑みを浮かべた。


「睿王殿下が寿康宮でお待ちです。どうぞお越しください。」


「断ったら?」


「その時は……」


福海は目を細める。


「奴才も、少々手荒な真似をするしかございません。」


彼が軽く手を振ると、禁軍が一斉に踏み込んできた。


私は小満を抱き寄せ、一歩ずつ後ろへ下がる。


その時だった。


賢妃が突然立ち上がり、短剣を自分の喉元へ突きつける。


「誰も動くな!」


その声が部屋中に響いた。


「この場で本宮が死ねば、その責任……あなたたちに負えるの?」


禁軍の動きが止まる。


ほんの一瞬。


その一瞬で十分だった。


屋根梁から七、八人の黒い影が舞い降りる。


影七の刀は、その姿よりも速かった。


次の瞬間には血飛沫が舞い、部屋に鉄臭い匂いが広がる。


私は慌てて小満の目を塞いだ。


「見ちゃだめ。」


腕の中の小満は震えていた。


でも泣かなかった。


「ママ……ボク、怖くない。」


「うん。」


私は強く抱きしめる。


「怖くないよ。」


「パパが帰ってきて助けてくれる?」


私は首を振った。


「助けてもらわなくてもいい。」


唇を噛み締める。


「私たちだけで守る。」


福海は形勢が悪いと見るや、踵を返して逃げ出した。


私は反射的に追いかける。


そして――


剣を突き出した。


グサッ。


皇帝が教えてくれた唯一の技。


ちゃんと当たった。


刃は福海の太腿を貫いた。


「ぐあぁぁっ!!」


悲鳴を上げて床へ倒れ込む。


私はその胸を踏みつけた。


「言え。」


剣先を向ける。


「睿王には、まだ何を企んでる?」


福海は血を吐きながら、それでも笑った。


「殿下……本当に勝ったとお思いですか?」


「……」


「睿王殿下は、すでに城門を押さえております。」


その笑みは歪みながらも、どこか勝ち誇っていた。


「陛下は――」


一拍置いて。


「もう、お戻りにはなれません。」


私の足に力が入る。


福海は苦しそうに咳き込み、また血を吐いた。


私は彼を見下ろしたまま、静かに告げる。


「もし本当にあの人が帰ってこないなら。」


「私は自分で迎えに行く。」


声は驚くほど冷静だった。


「でも、お前だけは――今夜、生きては帰れない。」


その瞬間。


影七の刀が、福海の喉元へ静かに添えられた。


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