第15話 今夜、朕は誰が敢えて邪魔するか、見てみよう
淑妃をようやく振り切ったと思ったのも束の間。
皇帝が庭園を出たところで、今度は賢妃と鉢合わせした。
今度の賢妃は、分厚い帳簿を何冊も抱えている。しかも、その顔は妙に深刻だった。
「陛下!」
皇帝が足を止める。
「何だ?」
賢妃は帳簿を開いた。
「後宮に、重大な問題がございます!」
皇帝の眉がわずかに動く。
「重大な問題?」
「はい」
賢妃は真剣な顔で帳簿を指差した。
「後宮の文化事業への支出が、あまりにも多すぎます」
皇帝は眉をひそめる。
「どういう意味だ?」
賢妃が指差したのは――
「読み物です」
「……」
皇帝の顔が無表情になった。
「昨年は三千両」
「一昨年は二千両」
「そして今年は、すでに五千両を超えております」
皇帝は黙り込んだ。
しばらくして、ようやく口を開く。
「それで?」
賢妃は大真面目に言った。
「後宮の文化事業は、抜本的な改革が必要かと」
皇帝はゆっくり目を閉じた。
またか。
今度は後宮の財政問題まで持ち出して、朕をここに引き留めるつもりか。
「太后に相談しろ」
それだけ言い残すと、皇帝はさっさと歩き去った。
かなり遠くまで歩いたところで。
ずっと黙っていた福海が、とうとう耐えきれずに小声で口を開いた。
「陛下……」
「何だ」
「お気づきではありませんか?」
皇帝の足が、ほんのわずかに止まる。
福海は周囲を気にしながら、さらに声を落とした。
「最近、皆様……」
「どうも、陛下が蘇貴妃様のもとへ行かれるのを、あまり望んでおられないような……」
一瞬。
空気が静まり返った。
皇帝は何も答えない。
だが――
そんなこと、とっくに気づいていた。
最初は、ただの偶然だと思っていた。
蘇貴妃が体調を崩した。
誰かが突然倒れた。
宮中で火事が起きた。
一度や二度なら、確かに偶然で済む。
だが。
これほど何度も続けば、話は別だ。
偶然にしては、出来すぎている。
誰かが朕を止めている。
しかも、一人ではない。
後宮全体が、まるで示し合わせたかのように。
皇帝の目が、すっと細くなる。
「……そのまま進め」
低い声だった。
福海が顔を上げる。
皇帝は前を見たまま、淡々と言った。
「朕も知りたい」
「今夜、いったい誰が――」
「最後まで朕を止められるのか」
その声に、かすかな笑みが混じった。
どうやら今夜。
皇帝を蘇貴妃のもとへ行かせないための「後宮総出の阻止作戦」は、思った以上に難航しそうだった。
ここまで読んでくださって、ありがとうございます!
陛下は今夜、無事に彼女に会えるのでしょうか?
それとも、また誰かが邪魔をするのでしょうか?
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次の展開もお楽しみに!




