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パートワン 4/4

      その11


若者の街は、混沌としていて、予断を許さない。


何か事件が起こっても、その痕跡はたちまちのうちに消え去り、別の痕跡がそこに上塗りされていく。多くの人々が常に行き交い、膨大な記憶と印象が、刻々と書き換えられていく。


この若者の街の混沌は、犯罪を隠し、犯罪者に棲み家を用意する。


この若者の街の悪と悪のあいだには、文字として書き出されることはないが、仁義などと呼ばれる、不文律の法律なるものが存在する。


若者の街に見られるこの不文律の法律は、大胆なこの街の弱肉強食や、不道徳、不品行をこの街にとってのよそ者の目からは見えにくいものとするのに不可欠なものである。


「手がかりみたいな...」


年下の同僚が言ったのだ。


刑事と裏の世界の住人たちとの関係は、長年やり合ってきた同志であり、


手の内をお互いに知り尽くした同志であり、。しかも、日頃からたびたび顔を合わせる者同志であった。


そんな刑事がいまさら裏世界の住人のところに行って、何十年も前のことを根掘り葉掘り掘り返して聞くのは、あまり上等なやり方とは言えない。

そのことについて、彼らがもう終わったと考えているのなら、そういうやり方からは、良い結果を生みづらいと思われた。


裏社会の住人たちは刑事たちに決まって同じ返事を返した。



「昔のことについて、彼らのもう終わったと考えていることについて、新たに何を聞き出そうとするのか」



しかし、二十年、三十年前の事件と同じパターンの事件が、最近頻発しており警察に対して、通報やこの二十年、三十年前の事件との関連について問い合わせが多数寄せられている中、その事件を当時担当していた蕪木栄一という刑事の経験や知恵が必要と判断されることになったとしても、それは、当然のことであった。


そのことで、蕪木栄一は、当時から世間の非難を浴びたのだ。そして、その非難は今も続いていたという。


「次に同じようなことが起こったら、一体どうなるのか?」


実際には、街の裏社会の住人たちも、関心を持っていた。 


この事件は、みるみるうちに広がりを見せており、抜き差しならない事態がそう遠からずに訪れることは間違いがなかった。


とある酒場の店主は、無愛想に蕪木栄一たちに返事した。


「同じこと何回も聞かれても、オレの言うことは何も変わらない。あんたに言えることはない。いつも同じ答えで済まないな」


「短い間に、あんたたちもずいぶんと店の入れ替わりがあったみたいだな。そこにあったはずのコンビニも近頃見かけなくなったし……」


亀井閑子は、店主は世間話で話を継いでいこうとしたが、返事もしてくれなかった。


「……」


そして、店の客たちが刑事のとこのにやってきた。


「いざこざが近頃になってまた絶えないみたいだしな。ドンドンひどくなるって言う話だし、あんたたちも大変ただと同情するよ」


「ここいらじゅうの防犯カメラをチェックしてみたらいいじゃないか。 防犯カメラだって機械だ、壊れることがあっても不思議じゃないけど」


「壊れるのは、お前らの都合次第」


などのとんでもない皮肉を言われ放題の状態になっていた。


ところで、あいつらは、また現れたとか言う話があるが……」


* *


夜の闇の中を、何かが動いていた。


動くものの正体が次第にはっきりとしてきたのだ。


     *      *世界は、事件で出来ている2


蕪木栄一、昔は、ダブついた体つきではなく、筋肉質な体つきで、脚も速く、いくら走っても疲れを感じることはなかったのだ。


「気づいたら、この無様な境遇になれてしまっていたというわけである。そして、この境遇に不満も感じなかったのだ」


すでに、重い荷物を背負っていた。


* *


☆☆その晩、蕪木栄一が閑子の家を訪れてきたというわけである。☆☆☆


確かに、


二十年前にここで起こったことは、蕪木栄一の心に深い傷を残していた。


足りない!いろいろ!


冬の風が寒さの威力を増してきた年の瀬の、ある日の昼下がり、今風のカフェに無骨さを体全体から漂わせ、三人の男が入ってきたのだ。男たちは、一つのテーブルを囲んで席を取ったのだ。


男たちは、なんとか今風のカフェの仕来たりに従い、飲み物の注文を済ませると、自分たちの席に戻り、腰を降ろしたのだ。


年長の栄一は、ヨッコイショと腰を降ろしたのだ。


「そりゃ、弱音の一つだって吐きたくなるよ! そりゃ、年だもの。俺は、すっかり爺さんだ」


栄一は、言ったのだ。


蕪木栄一は、老刑事である。自分の退職というのも遠い未来のことではなかった。大病だって経験していた。


蕪木栄一は、無鉄砲なことをやる年ではない。自分は、自分の体と頭とも相談しながら、何事も慎重に進めていかなければ、体力、根気が自分を支えきれなくなって、とんでもない、軽率な、取り返しのつかない失敗をしてしまうことになる、栄一は、もうそんな年齢なのだ。世間では、これを耄碌もうろくという。

猿踊り


      その12


感慨と余韻を持たせたのだ、失敗、破綻。



久米四郎は、自分に何が起こったのか、何をしでかしたのか、自分がどこにいるのか、今、何時なのか。いや、そのときの久米四郎は、自分の名前さえも、言おうとするがおぼつかない。


強烈な血の匂い、血糊の色の鮮やかさが、ただただ、自分の感覚を専有してしまっていた。


そのときの久米四郎の時間は止まってしまったのだ。久米四郎の世界との関わりは壊れてしまっていたのだ。


繰り返すようだが、久米四郎には、すべてのことが闇の中にあったというわけである。目はもちろん、久米四郎の五感はもちろん生きてはいるのだが、久米四郎の心は何かを感じることはなかったのだ。


* *


殺人事件があったというわけであった。


幾らも担当した殺人事件で、彼の頭に蘇るのか、その理由が彼にはわからなかったのだ。自分のことながら


久米四郎は、この若者の街に近頃にやってきたのだ。久米四郎は、人と折り合うことが不得意な人間であったというわけであった。そして、その割には、わがままで、自分勝手で、気取りのつよい人間という印象を周りの人間に与えていたのだ。


久米四郎が人を殺したという話は、この若者の街では知らないものはいなかったのだ。


しかし、この若者の街では、久米四郎の前で、この殺人事件について話題に取り上げることはなかったのだ。


そして、久米四郎はこの殺人事件について取り調べを受けることはなかったのだ。



      その13


前に吉富の話を出しておく。


吉富にかかった重圧は、多分他人には想像もできないほどのものだったに違いなかった。


(越えれそうで絶対に越えられない塀、壁を描く)


蕪木栄一が、亀井閑子の家を訪れてきた。


「うちの警察の所轄で起こった事件やトラブルについて、できるだけ現場に出かけてその様子を自分なりに分析してくるように言われているだけなんですよ。私が来たからといって、なにか意味があるというわけではありません」


「ところで、ご挨拶のついでに、ひとつだけ気になったことがあったので、それがなかなかプライバシーに関わる質問なので、答えたくなければ、答えなくとも結構なんです」


「どういうことなんでしょうか、気になりますよ。私に分かることならお答えします」


「実は、私は、おわかりのように、なかなかたくさんの雑用というか細々した仕事を抱えているわけでして、しかし、つまらないことでも、大きな事件の解決に大きなヒントとなることもありまして、つまらないように見えることでもよく見ておく必要があるのです」


「確かめて置きたいことと言いますのは、とある高級品の商品をデスカウントで販売しているセレクトショップというのがありまして、こういう、セレクトショップの中には、いろいろとトラブルを抱えている店も、たまにありまして、そういう店で買い物したお客さんから、いろんな相談が寄せられているわけでして。いやね、そんな店で買い物して悪いというわけではありません」


「そういうお店について、あちこちで、いろいろと話を聴いているわけなんですよ」


「お買い物は、確かに好きですし、いろいろな情報を集めて、必要なものをできるだけお値打ち価格で手に入れたいと思うのは、女性なら誰でも理解できる」


「確かに、そうです。誰がどこの店で買い物しようと自由です」


(セレクトショップのイメージ)

クレーム


「変な噂が立っているんですよ。そんなもの信じてしまったら、あいつらの思いの壺ということになってしまう」


「思う壺って?」


「お若いので、しかたないかな? 思いの壺とは、相手の狙い通りにだまされる、はめられてしまうということです」


それが吉富という名前だったんだな。


手帳で何やら確認している。







亀井閑子にとって、この一週間ほど、何かと落ち着くことのない日々が続いている。


会社のリーダーとして、何かが不安になってしまった。このところ、立て続けに起こった不規則な予想もできない出来事がここ数日彼女の心に影を落としている。


彼女の会社の運営は順調に進んでいる。亀井閑子の手腕も世間からは対応の評価を勝ち得ている。


亀井閑子は、世間的に見れば、


亀井閑子は、スマホをバッグから取り出すと、一緒にショッピングした仲間たちにひとり、ひとりに電話したというわけである。

亀井閑子の夢、白昼夢と関係あり、本当は悩んでいる。メールで友達から指摘。

上品、しばらくは都会から離れていた、旦那は官僚、実はとんでもない秘密を握っている。隠している。目撃している。とんでもない事実の証人であった。


○パートトゥー○


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