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帰宅

いきなりテンション変わって後半は暗い話になってしまいます。

でも、これは次へ進む成長痛みたいなものだと思って読んでいただけますと幸いです。m(__)m


この後からまた明るい話に戻っていきますのでよろしくお願いします


ピロリン。


スマホから着信音が聞こえる。


『兄さんに電話をしたんだけど…、ダンジョン内にいるせいか、つながんなかったから一応メールで伝えておきます。お母さんが兄ちゃんのことを探してるから早く帰ってきて。どうしてかはわからないけど兄ちゃんがダンジョンに潜ったのがばれたっぽいんだよね』


そのメールを見た俺は、すぐに帰宅した。

というわけにはいかない。


取れたアイテムをすぐに売らなくちゃいけない。

鮮度こそ命っていうアイテムばかりだからだ。


急いで、スマホでアイテム買取センターの位置を確認する。


「んんっ?この場所は…、お土産屋の場所じゃん。あそこはアイテム買取事業にまで進出してたのか」


お土産屋兼買取センターにつくと意外と混んでいた。

お客を見れば半々くらいだ。


平日なのに買取センターのほうにもこれだけの客がいることは、昨今のダンジョン探索熱の高まりを反映しているのだろう。


「あれ?ここには自動買い取り機はないのか」


俺がいつも使ってる買い取りセンターには自動買い取り機が設置されており、自動でやってくれるから楽でいいのだが、ここの買い取りセンターにはおいてなかった。


「まぁ、機械の導入も結構金がかかるって言ってたしな。しょうがないけど、並ぶか」


俺は仕方なく買い取りを待つ人々の列に並んだ。


30分ほど待ってから俺の番がやってきた。

受付の人は若い人で、笑顔で対応してくれた。。

「ええっと…、スライム関係のアイテムが計2540円、雪クマ関連のアイテムが7万円で、全部合わせて7万2540円になります。お間違いないようでしたらこちらのほうにサインをお願いしますね」


「わかりました」

俺は出された書類にさらさらと自分の名前を記入して提出し、お金を受け取る。


「ありがとうございました。またのご利用をお待ちしております」

受付の人はぺこりと一礼をして、俺のことを送り出してくれた。


俺のほうもそれに応じるように軽く会釈をしてから買取センターを後にした。


そのままN駅まで移動し、新幹線に乗り自分の住んでいる街へと帰ったのだった。

帰りの新幹線では寝ることなく、景色を楽しみながら。



◎ ◎ ◎ ◎


自分の街についたのは午後4時ごろだった。

いつもだったらきれいな夕日が見られる時間だが、今日はあいにくの天気で全体的にどんよりとした雰囲気だった。


でも、その雰囲気とは対照的に俺は成し遂げたんだという達成感と、母さんになんて伝えようかという高揚感で舞い上がっていた。


「どんな感じで言おうかな。レベルが上がったんだ。ほらスキルも手に入ったしさ」

「いや、違うな。ほら、このお金見てよ。こんだけ稼げるようになったんだよ。だからさ、俺が探索者(シーカー)になるのを認めて、とか?」



俺はそんなことを言いながら玄関のドアを意気揚々と開ける。


「ただいまっ」


ドアを開けると、母さんがものすごい形相でこちらを見ていた。

心配したような、悲しそうな、そして少し怒っているような、様々な感情が入り混じった筆舌に尽くしがたいそんな表情で。


そのそばではあたふたする弟の姿が見える。


「夏ッ。あんたまたダンジョンに潜ったでしょ。しかも、かなり危険なことをしたでしょ」


なんで、ばれたんだという思いと、先ほどまでの高揚感との高低差で困惑する俺。


「でも、ほら、大丈夫だったし。ほらみてよ、レベルもちゃんとあがってるんだ」


「どれだけ強くなっても、お父さんみたいになることだってあるの。わかるでしょ」


「お金だってこんなに」

俺は、今回の探索で稼いだお金を取り出して母さんに見せる。


すると母さんは、そのお金ごと手を払いのける。

飛ばされたお金たちは、チャリンと壁に当たり、地面に落ちていく。


プツンッ。

俺の中で何かが切れる音がする。


「なんで母さんは俺のことわかってくれないんだ」

「もういい。こんな家出てってやるよ。もう俺にはかかわらないでくれっ」


玄関のドアをガシャッとものすごい力で突き破るかのように開けて俺は家を出た。


「ちがっ。私はお金なんかよりあんたのほうが…」

母さんは何かを言いたげだったのかもしれないが、俺の耳にはもう届きやしなかった。




どす黒く幾重にも重なった雲たちは気だるげに、自らが保持する多くの水を、ただ重力に委ね垂れ流していた。


傘も何も持たずに家を出た俺は、その雨を全身で受け止めていた。


行く当てのない俺は、どこへ行くとも知らずにただただ街中を歩き続けた。

いつもお読みいただきありがとうございますm(__)m

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