勝利
雪クマは言葉が通じるということはないのだが、野性の勘なのだろうか、俺の挑発をくみ取って雄叫びを上げる。
そして、一直線に俺のほうへと走り寄り、攻撃を仕掛けてくる。
「うぉっと」
今までの癖と、反射神経によってどうしても攻撃をよけてしまう。
「別によけなくてもいいのにな。体がどうしても覚えちゃってるんだな」
雪クマは両手のこぶしを交互に地面に打ち付けるようにして攻撃を仕掛けてくる。
さすがに繰り返しての攻撃はよけることができないから、体にドスンと当たる。
今までだったら、一発アウトで、丸裸になって死亡していただろう。
一応、スキルの効果があるのかステータスを見てみる。
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ステータス
狩集夏
レベル : 10
HP : 15/20
MP : 20/20
SP : 10
スピード : 10
攻撃力 : 12
レベルアップに必要な経験値 : 100
スキル : 《数値固定》
呪文 : 炎呪文 Lv.1
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「おおっ。ホントにダメージをくらってない。このスキル…、強すぎじゃね」
そんなことほざいている間にも休むことなく攻撃し続ける雪クマ。
「ほんと、こいつ凄いな。ずっと攻撃してるのに、疲れの一つすら見せないなんて」
自分に余裕ができた分、自然と相手に敬意を抱けるようになった。
「だけど、俺のほうが有利だからな。疲れがいずれでてきてスタミナに限度のあるお前と、際限なく守り続けられる俺。どちらが勝つかなんて…明白じゃないか」
「せめてもの経緯を表して…、ちゃんと戦ってやるよ」
自分に酔いしれ、思わずカッコよさげなセリフを吐いてしまう。
「炎呪文 Lv.1ッ」
俺は両手を雪クマのほうに向け叫ぶ。
ボウワァッ。
手の先から炎が出てきて、雪クマの体へと直撃する。
そして炎によって包まれた雪クマの体が見えなくなる。
シィィーーン。
静寂が訪れる。
うん。決まったな。
これは決まったわ。
勝利を確信した俺は、拳を天井めがけて突き上げガッツポーズをとり
「よっしゃぁー」
と叫ぶ。
それと同時に、煙に覆われていた雪クマのほうから
グルルァ
と叫び声が聞こえてくる。
そして、煙の中から、スゥっと出てきて再び攻撃を仕掛ける雪クマ。
「はい?」
俺は雪クマの攻撃を受けながら、腕を組みながら理由を考えてみる。
あっ、そうか。
よーく考えてみたら守りは一級品になっても攻撃は初歩のうちの初歩だったわ。
てへっ。
レベルが上がった嬉しさでテンションが上がりすぎてまともに考えられてなかったわ。
ちゃんと考えなきゃいけないな。
うーん。使えるものねぇ。
気温の低い場所で使えるものかぁ。
「あっ、“アレ”が使えんじゃん」
俺は天井のほうを、目を凝らして確認する。
“アレ”を使うにはここじゃだめだな。
あと、5メートルほど右、10メートルほど前に行かないと。
そうだっ。俺にしかできない方法があるじゃん。
ダメージを食らわない俺が。
名付けて、セルフおとり作戦だ。
名前の通り、俺がおとりになってその場所まで雪クマを誘導するってだけの単純な作戦だ。
ふつうのおとり作戦だったら、おとり役の人がダメージくらったりとかのリスクがあるけど、俺はダメージを食らわないからこそできる作戦だな。
「おーい。雪クマッ。こっちだこっち。こっちで戦おうぜ」
目的の場所のほうへと歩みを進め、誘導する。
雪クマは、攻撃をやめることなく移動する俺に追随してきた。
そして俺は目的の場所へと至る。
「そーだな、あと3センチほど右に寄ってくれると…。そうそう、そこ。そこだよ。いいねー」
そして俺は天井のほうへ手を向けて
「炎呪文 Lv.1ッ」
炎は天井に向かって伸びていき、大きなつららへと到達する。
炎はつららの根元をゆっくりと溶かし、最終的には天井とつららを切り離す。
ビュー―ン。
雪クマの体めがけて勢いよく落ちるつらら。
バシュゥッ。
先のとがったつららは雪クマの体を突き抜ける。
雪クマは悲痛の声をあげてから、バタンと地面に倒れこむ。
「さすがに、これを食らったら…、動けんだろ」
いきなり起き上がったら怖いから、遠くから雪クマの体をつんつんとつついてみる。
雪クマは動かなかった。
「これで、正真正銘の勝利か」
《雪クマ盗伐により経験値1000を獲得しました》
《レベルが5上がりました。《氷呪文 Lv.1》を獲得。ステータスを確認ください》
「おおっ。この声が聞こえるってことは、ホントに勝てたのか」
先ほどの偽物の勝利と違って、本当の勝利だ。
安心してどっと疲れが出てきて、地面の雪に背中から倒れこんだ。
「一応ステータスの確認っと」
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ステータス
狩集夏
レベル : 15
HP : 15/30
MP : 5/30
SP : 15
スピード : 10
攻撃力 : 17
レベルアップに必要な経験値 : 200
スキル : 《数値固定》
呪文 : 炎呪文 Lv.1、氷呪文 Lv.1
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「呪文が増えてるっ」
夏は強くなった自分のステータスをしばらく眺めていたのだった。




