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第2話(6)

キィィィィィー……。


扉が開く音すら、なにやら不吉に聞こえる。


いや、大丈夫、大丈夫。たぶん……。


意を決して、顔を上げる。ああ……。いい天気だなぁ……。


このまま雲隠れしてしまおうかなぁ……。


そういうわけにもいかないので、窓にぴったり貼りついている謎の男に声をかける。


ああ……。中に入りたいなら入ればいいのに、何をしているんだろう……。


「あのう……。そこで、何してるんですかー……?」


しかし男は微動だにしない。


「あの……ッ! 何してるんですかー!」


聞こえなかったのかと、さっきより大きな声で言ってみる。


しかし、男は、微動だにしない。


「なにをぉお! して! いるんですかぁあ!」


近寄って、大声で叫んでみる。


しかし……、男は……、微動だにしな……い。


な……、なぜだ……。


人、だよな……?


あまりにも動かないので、本当に人間なんだろうか、と疑問がわく。


ちょっとした好奇心と、なんとかしなくちゃという焦りで、俺は、突っついてみることにした。


つん、つん。


………………。


つん、つん。


………………。


つんつんつんつんつんつんつんつんつんつんつんつんつんつんつん……。


秘技☆突っつき連打!


なんだか俺は、夢中になって突っついていた。


つんつんつんつんつんつんつんつんつんつんつんつんつんつんつんつんつんつんつんつ……、


「素晴らしい……」


ほうっ……、と、ため息のような声を、その男はもらした。


「?!」


驚きのあまり、突っついていた手が止まる。


指先が、腕にくっついたまま。


ぴくり。


男が動いた。


「………………っ!」


さも今気づきましたとばかりに、男はこっちを向く。


いや、今気づいたんだろうけどさ。


そして、くっついたままの俺の指を凝視する。


「これは?」


うわあああ! めっちゃ純粋だよ! めっちゃ純粋な瞳で訊かれちゃったよ!


なんて答える?! なんて答えるんだ、俺!!!


「こっここここここ!」


「こここ?」


あああー! そんな目で見ないでー!


「こここ、ここ、これは、指ですっ!」


何言ってんだ俺ー!


おちつこう、まずおちつこうよ。


びっくりしすぎて、指も、動かん……。


もうっ! 声をかけるなら、先に言ってよね!!


「そうですね。指ですね」


「はい……」


もう、煮るなり焼くなり好きにして……。


「もしかして、私に何か用事でもありましたか?」


そう! そうなんです!!


俺はぶんぶんと首を縦に振る。


ドキドキドキドキ……バクバクバクバク……。


しっ、心臓さん! 静かにしてくだささい!! なにをいうんだっけ……なにを……なにを……。


「あー……うー……あー……」


なんだろう、何を言うんだっけ?


「ゆびっ!」


「指?」


「つ……つついてすみません……」


「いいえ? それは気にしていませんので。何か用事があったのではないですか?」


そう! そうなんですけどね?! 思い出せないんですよ?! 何も!


「立ち話もなんですから、中に入りませんか?」


そうだ、それだ!


どうして中に入らなかったのか訊きたかった、ような、気もする!


「はいっ入りましょうそうしましょうっ!」


この人といるとペースが崩される気がする。いや気のせいか……。


今はびっくりしてるだけだし、俺。


ぐぎぎぎぎぎ、とようやく腕を下ろし、謎の男と一緒に店内へと入る。


ぎこちない動きの俺とは対称的に、ごく自然な動きで歩く男の後ろについて行く。


さっきの店員さんが、ぎょっとしたようにこちらを向いたが、一瞬にして笑顔に変えた。……さすがだ。


「いらっしゃいませー! こちらのお席へどうぞー」


さっきまで座っていた席へと案内され、俺たち2人は向かい合って座ったのだった。

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