第1話(50)
収穫祭がどんなものなのか、行って実際に見てみればわかるだろう。ディールのことだ、連れてってくれないなんてことはないだろうから、2日後を楽しみにするしかないな。
あれって何なのか気にはなるけど……。
そうと決まれば、あとは明日1日何をするかだなぁ……。
「明日何しよっかなー……」
「ノノルたちにでも会いに行くか?」
「ディールも一緒に来てくれる?」
「ヒマだからな、別にいいぞ」
その日はそのあと、モンビホの収穫祭について聞いたり一部教えてもらえなかったり、温泉に入ったりごはんを食べたりしているうちに夜になった。
「そろそろ寝るか」
「そうだね」
ミィウとメルクレンは既に彼女らの部屋に戻っている。
明かりを消して、ベッドにもぐり込む。
寝つきのいい俺が意識を手放すのにそう時間はかからなかった。
翌朝。
朝食を終えた俺たちは、テンバドの街に買い物に行くと張り切っているミィウとメルクレンの2人と別れ、ノノルたちのいる森へと向かった。
ミィウにモクルやブラウのことが気にならないかと訊いてみたが、「あんなに強いのに何を心配するのよ」と笑われてしまった。そういうものなのか……。
テンバドの街の出入口から出て、のほほんと歩きで森を目指す。この辺りの安全は心配いらないみたいだな。この街に戻ったときにいたギルド員たちももういなかった。
「あの森だな」
道なりに進んで数分後、うっそうとしげる森が見えてきた。
森の中には、よく見なければ気づかないかもしれないが、獣道のようなものがあり、迷うことなくディールはその道をたどる。
「よく道がわかるね」
「ああ。これだ。ウォルンにも見えるようにしてやろう」
ディールがそう言うと、獣道の上にうっすらと光が舞う。
「なっ、なにこれ……」
「何って、道しるべの魔法だ。初歩的な魔法だったと思うが?」
「初歩的ってね、ディール。街とか建物の場所なら、そうかもしれないけど。人とか魔獣に対して使うのなんて見たことないよ」
「魔法陣で移動するのと変わらないだろう。何をそんなに驚いているんだか」
うん。ディールならできてもおかしくはない。おかしくはないけどさ……。
初歩的ってとこには賛同いたしかねるね! 断固としてね!
どうして魔法陣でちょちょいと移動しないかというと、ディールはよほど俺のことを運動不足だと思っているらしく、ピクニック気分で体力作りだなんだと言って、歩きで行くことを提案してきたのだ。
無論、俺が反対できるはずもなく、こうしててくてくと歩いているのだ。宿で朝食をとったときに、お弁当まで作ってもらってきている。
出掛けるときにお弁当を要望する客も少なくはないらしく、すぐに用意してもらえたが。
なんてことを思い返しているうちに、ひらけた場所へ出た。
「あそこだな」
ディールの声に顔を上げると、すぐ目の前にノノルたちがいた。
起きていたらしいモクルがのっそりと立ち上がり、こちらを見てまた座った。
その傍には、眠っているブラウ。
ブラウに守られるようにして腹のあたりで眠っているのがノノルだな。
起こすのも悪いかと思って、静かに近づく。
木漏れ日が優しく降りそそぎ、穏やかな風が通りすぎる。
ディールも俺も何も言わず、近くまで寄るとそこに座って、何をするでもなくその光景を眺めていた。




