第1話(44)
「はぁーっ、つっかれたー」
部屋のドアを閉めて、俺は寝室へと飛び込むようにして入り、ベッドへダイブする。
ぼふーん。
「だいぶ疲れてるみたいだな」
「だって今日色々あっただろー。なんかたくさんの魔物と戦ったりとかさ」
「ウォルンは戦ってないだろ」
「そう言うなって」
「ではお疲れのウォルン君に飲み物を持ってきてやろう」
「よっ! ディール様! 貴公子!」
「それは褒めてるのかどうか微妙だな」
ぶつぶつ言いながらディールは寝室を出て行く。
「うーん、ふかふかぁ……」
すぐにディールは戻ってきた。果実系の飲み物を2つ持って。
「どうぞ」
「ありがと」
ベッドの脇の小さなテーブルみたいなとこに飲み物を置いて、俺とディールはベッドに並んで腰かけた。
先生! このシチュエーションならかわいい女の子がいいです!
「明日になったらギルドにもちゃんと情報が届くかなぁ」
「たぶん大丈夫だろう」
「そういえばさ、ディールはなんか色々知ってたみたいだね」
「うん?」
「あのなんとかって魔物のことだよ」
ディールは一呼吸置くと、ブゥン、と音がした。
あっ、秘密の話かなぁ?
「ポルポレンのことだな。あの魔物は基本的に人間にはなつかないんだよ。僕も召喚ぐらいだったらできるが、あんな風に信頼されるかと訊かれれば答えは否だな。僕であれば命令をきかせる程度ならできるが、意識を失ったときに護ってもらえる自信はないな」
「へー。強いの?」
「そこそこな。あそこにいた魔物たちから主人を護るのが精一杯みたいだったからな。ポルポレンとはいっても、まだ幼いんだろう。ポルポレンならあのくらいの魔物全滅させられるはずだからな」
「そうだったんだ」
「ああ。魔力の使い方が不安定だった」
「そんなのまでわかるんだ」
「まあな」
「それにしても災難だっただろうなぁ……」
「いい迷惑だ」
そうは思ってないような顔でディールは言う。
それから俺は、もうひとつ気になっていることがある。
「ところでさ、鉱山が崩れやすいってのはわかるけど、なにも補強の魔法を重ね掛けしなくてもよかったんじゃない?」
「なんだ、気づいてたのか」
「気づいたっていうか、見えちゃったんだよね」
「どう見えた?」
「どうって……」
どういうことだろう?
「見られちゃまずかった?」
「まずくはないが。どう見えたかが問題だな。いや、ウォルンにじゃないがな」
「俺にじゃなく?」
「補強の魔法に見えたか?」
「違うの?」
「僕があいつらを信用しきれてなくて、補強の魔法を重ね掛けしたと思わせたかったんだがな。成功したかどうかはわからないな」
「違う意図があったんだ?」
「魔物を倒しにきて、魔物に肩入れしていると思われるのも不本意だからな。だがあの魔物は何かを護っていた。それだけはわかっていたから、とりあえず助けておいたんだが。近くに行って護っていたのが人間だとわかってホッとしたな」
「よくわかんないよ。わかるように言ってよ」
「どう説明すればいいんだろうな。魔物がたくさんいる中で、1体だけ変なのがいたんだ。他の魔物は全てこちらに敵意があった。人間に対して攻撃してくるのが間違いないと思うような」
「けどポルポレンはそうじゃなかった?」
「そういうことだ。なにかおかしいと思って、そいつに調査の魔法をかけてみた。そうしたら、そいつはまわりの魔物と戦っていたんだ。おかしいだろう?」
「それは……、そうだね」
「何かあると思ってな。その時は詳しくはわからなかったが、何かを護っているようだったから、助けてやろうと思ったわけだ」




