第1話(42)
建物の中に入ると、玄関らしきところがあって、そこで靴を脱ぐとすぐに脱衣場があった。
「けっこう広いなー」
「迷子になるなよ」
「そこまで広くないよ」
脱衣場も広くてロッカーも大きめのがいっぱい並んでるからなんだか変な感覚だ。
ロッカーの鍵番号を確認して探す。俺とディールは隣のロッカーだ。
「あっ、あったよ」
ロッカーを開けて中を見る。
「色々入ってるなー」
ごそごそとロッカーの中を探索する。ちょっとしたお宝探しみたいだ。
「へー」
俺が1個1個見ながらもたもたしていたら、ディールは既に脱ぎ終わっていて、しかもなんも着てないのに堂々としていた。
「早くしろよ。置いてくぞ」
「えっ。待って待って」
ちょっとディールさん、恥ずかしいとかないんですか……。
「何考えてるんだか」
「なんでわかっちゃうんだよ」
「わからないが想像はつくな」
「なんだよそれー」
ディールと2人で浴場のほうへ行く。まずい、これ迷子になるかも。
「なかなかいいな」
「そっ、そうだね」
ディールから離れないでおこう……。
俺とディールは軽く汗を流す程度に体を洗って、いざ、温泉だ。
「どれから入ろうかなー」
「まさか全部入る気じゃないだろうな」
「まさかー。でも面白そうなのばっかりだね」
「なにしに来たんだか」
ディールはオーソドックスな1番広いところに入ろうとしていた。
えー。あっちとかそっちとか面白そうなのにー。
迷子になりそうだったから、別のところにするのは諦める。
「入りたいところに入っていいんだぞ?」
「だって迷子になりそうだから」
「そこまで広くない」
「そうかなー。いいや、俺もここで」
「何日か泊まる予定だから慣れてからでもいいしな」
「そうだね」
ためらいなく入っていくディール。俺は恐る恐る足先を浸ける。
「そんなびびらなくても」
湯の中にしっかり浸かったディールから声をかけられる。
「ほんとだ。そんなに熱くない」
湯加減はちょうどよかった。
「ふいー。ごくらくごくらくー」
「寝るなよ」
「寝ないよ。ところでさ、女湯って覗かれたりしないのかな? ディールみたいに魔法でちょちょいとさ」
「覗きたいのか?」
「しないけどさー、する奴がいるかもしれないんじゃないかなー、って」
「何のために鍵番号確認してると思ってるんだ」
「鍵番号?」
「覗きもそうだが、こんな誰もが油断するような場所で、対策がとられてないわけないだろ」
「そうなんだー」
「そうなんだよ。ウォルンはのんきだよな」
「そうかなー」
「そうなんだよ。泊まるときに代表者のギルドカードを確認してる。バカやる奴はいないと思うがな」
「ふーん」
「ウォルンは女湯興味あるか?」
「のっののの覗いたりしないよ!」
「いや覗きはしないだろうが。興味はあるだろう?」
「なにそれ。悪魔の囁き?」
「なんだそれは。僕は悪魔か」
「そういう意味じゃないけどさー」
「じゃあどういう意味だよ」
「なんか覗けって言われてるみたい」
「言ってないぞ」
「そうだけどさー」
俺はなんだか焦ってお湯をちゃぷちゃぷしてしまう。
「ま、冗談だ」
「冗談なのかよ、ディールはこれだからなー」
「ウォルンはからかうと面白いからな」
「俺で遊ぶのはやめてください」
「そう言われてもな」
「あーあ、からかう気満々だもんなー」
「のぼせるなよ」
「ん?」
そういえば、けっこう長く浸かってたのかな。
「そろそろあがる?」
「そうしよう」




